いへづと＠管理人作品第３弾

　皆さま、こんにちは。 今朝の北の国、最低気温は―２．２℃でございましたが、 日中は＋１１℃まで上がっております。 ぽかぽか春の陽気が気持ちよかったです〜。
　そめいよしのは３／２８佐賀にて開花いたしました。 南国は桜が見られてよいですね〜。
　昨日も拍手をありがとうございました。 拍手画像は蝦夷山桜の蕾が花開くまでを撮ったものでございます。 よろしければお楽しみくださいね〜。

　さて、投稿が落ち着く週半ば、管理人は連鎖妄想第１弾を仕上げました。 さくやさんの＃１３９「桜だより２０１２おまけ」と 饒筆さんの＃１４０コメントからの妄想でございます。

※　管理人の作品は全て尚陽前提でございます。

• 登場人物　　鈴・虎嘯
• 作品傾向　　ほのぼの（虎鈴風味）
• 文字数　　728文字

いへづと

「鈴、いるか」
　朗らかな太い声がする。休暇をもらって下に降りていた虎嘯が帰ってきたようだ。鈴は手を止めて振り返った。虎嘯は満面に笑みを浮かべている。その大きな手が無造作に抱え持つものを見て、鈴は目を丸くした。
「まあ、どうしたの、それ」
「下で咲いていたから分けてもらってきた」
　桜好きな陽子が喜ぶと思ってな、と笑い、虎嘯は咲き初めた薄紅の花がついた枝を差し出す。鈴は呆れ顔で桜を受け取った。
「綺麗だった、と口で言うより実際に見た方がいいだろう？」
「――桜は折ると傷むのよ、可哀そうに」
　そう言いながらも、鈴は手早く枝を花瓶に挿す。顔を曇らせる虎嘯から視線を逸らしたのは、己の声の棘がちくりと胸を刺したからだ。確かに桜は切り花に向かない花だ。蓬莱にいた時も桜を折ることはしなかった。けれど――。
「そいつは桜に悪いことをしたかな……」
　虎嘯は頭を掻きつつ、もう一度鈴に手を差し出す。そして、あ、と小さく声を上げた。大きな掌に載せられていたものは、小振りの花をつける白い桜。可憐な山桜は途中で折れていた。

「鈴にはこっちの方が似合うと思ったんだが……折れちまったな。すまん」

　虎嘯は大きな肩を竦めて頭を下げる。桜好きな陽子のために大きな枝を持ち帰った虎嘯が、鈴のために選んでくれた小さな山桜。鈴は感慨深く小枝を受け取った。そして、折れた枝を鋏で切り、そっと髪に挿す。

「素敵なお土産をありがとう」

　故郷の山でよく見かけた山桜が蟠りを解いてくれた。鈴は素直に礼と笑みを虎嘯に返す。虎嘯は安堵したように大らかな笑みを見せ、大きく頷いた。

　それから、鈴は虎嘯と二人で女王の執務室へと向かった。この家苞(いへづと)は、桜を愛して已まない女王の心を癒すだろう。桜の簪釵を挿した鈴はそれを疑うことなかった。

2012.03.29.

後書き

　見てのみや 人にかたらむ 桜花 手ごとに折りて いへづとにせむ
古今和歌集 素性法師
( 見ただけの様子を人に話そうか、 いや、それぞれが手に折った桜を持って家への土産にしよう。)

　この歌と饒筆さんのコメントを拝見して、妄想が頭を駆け巡りました。 こういうことしそうな人……尚隆なら直接連れて行くだろうな、 とか色々考えた末に虎嘯のご登場と相成りました。 茶碗を洗いながら場面を想像し、一気に仕上げました。 連鎖妄想一気書き、ちょっと嬉しいです。
　さくやさん、今年も素敵な歌と写真をありがとうございます！　 そして饒筆さん、妄想を誘うコメントをありがとうございました〜。

2012.03.29.　速世未生　記

素敵な土産　由旬さま

　虎嘯が「手折っても見せたい相手」は、 オフィシャルでは陽子、プライベートでは鈴、なのでしょうか。
　およそ花の似合わない虎嘯が桜を抱えてる図を想像すると、とても微笑ましい〜 そして虎嘯らしいおおらかさを感じました。
　若干、鈴は虎嘯と気持ちのずれがあるような…？

良いですねぇ〜　ネムさま

　虎嘯は一見大雑把に見えて、本当は細やかな気遣いが出来る人なんですよね （でないと大事の首謀者は出来ないだろうな）。 大きな男性が小さな女性の前でしょげている図というのは、 女性から見るとツボですね。
　由旬さんのおっしゃる通り、桜の選び方で、 虎嘯の二人の女性に対する気持ちが見えるようで楽しいです（^m^）

わあ！　嬉しいです！　饒筆さま

　おおっ拙者の呟きがお役に立てたとは嬉しいです！　 しかもちょっぴり胸キュンの素敵なお話に仕上がるなんて、 椅子から飛びあがりそうです。（ぴょこ！）

　虎嘯はきっと大きな手で、大事に大事に山桜を持ち帰ったんでしょうね。 その様子を想像すると可愛くってクスクス笑ってしまいます （大の男に失礼でしょうか・笑）
　鈴は・・・もしかして陽子だけに土産を持ち帰ったのかと ヤキモチ妬いちゃったのでしょうか？　それもまたカワイイですね。
　特に口説くでもなく、にっこり笑っておおらかな愛を贈ってくれる虎嘯に 胸キュンでした！（ポッ）

ご感想御礼　未生（管理人）

　桜祭伝統の連鎖妄想に早速のご感想をありがとうございました〜。

由旬さん＞
　たまには休んで夕暉の顔を見てこい、 と陽子主上に言われて下に降りた虎嘯を妄想いたしました。 なので、陽子主上には感謝の家苞でございます。 ふと目に留まった山桜はきっと鈴を思わせたのでしょうね〜。 更に妄想が邁進するご感想をありがとうございました。

ネムさん＞
　「風の万里〜」での虎嘯は人の心を掴むのが上手い男、という感じでございました。 私的には、虎嘯がそれを無意識にやっているに違いないと思っております。 そこがツボ！　でございます(笑)。

饒筆さん＞
　こちらこそ妄想のツボ刺激をありがとうございます。 お蔭さまでひとつ仕上げることができました〜。
　そうそう、鈴の小さなヤキモチも私的萌えツボでございます。 そして、無意識に口説く虎嘯も！　 お楽しみくださってありがとうございました〜。　

心が温かくなりますね　空さま

　いつもながら素敵な連鎖妄想です。
　鈴の桜に絡む気持ちが小さな小枝ひとつでふわりと変わって行くさまが、 空は何だかとても共感してしまいました。
　素敵なお話ありがとうございました！

ありがとうございます〜　未生（管理人）

　空さん、連鎖妄想にご感想をありがとうございました。 小枝ひとつでご機嫌直る乙女心にご共感いただき嬉しく思いました〜。