「管理人作品」 「12桜祭」

春の心はのどけからまし@管理人作品第4弾

2012/04/06(Fri) 18:02 No.340
 本日も北の国は雪が舞っておりました。 4月なのですが。春のはずなのですが! 忍の一文字で耐え忍びます。
 そめいよしのは4/6に松江で開花いたしました。 そして、5日に鹿児島・徳島、6日に東京にて満開となりました。 皆さま、春を満喫してくださいね〜。

 さて、管理人は連鎖妄想第2弾を仕上げました。 さくやさんの#125の歌からの妄想でございます。 よろしければお楽しみくださいませ。

※ 管理人の作品は全て尚陽前提でございます。

春の心はのどけからまし

2012/04/06(Fri) 18:05 No.341
 いつ咲くか。いつ散るか。春にはいつも振り回される。それでもいいか、と苦笑するのだ。美しい女神の微笑を見るために――。

 少し強い風が花の便りを伝える。季節は移ろった。待ちに待った知らせに、延王尚隆は騎獣に飛び乗り、空を疾走するのだった。
 目指すは隣国、慶。麗しき紅の女王は、今年も花便りを待ちわびているだろうか。だがしかし、辿りついた金波宮に、いつもの活気はなかった。出迎えた門卒が恐縮したように叩頭し、国主の留守を告げる。そして、景王からの親書を手渡した。
 急な案件でどうしても城を空けなければならない、と書簡には書かれていた。できれば掌客殿にてお待ちいただきたい、とも。
 できれば、という言葉を選んだ慶主の奥床しさに、尚隆は唇を緩めた。王でありながら、我が伴侶のなんと謙虚なことか。しかし、大人しく掌客殿で待つのは性に合わない。
「先に行っている、と伝えよ」
 軽く門卒に声をかけ、尚隆は再び騎獣に跨った。驚く門卒に構わずに蒼穹へと舞い上がる。そして、久方ぶりに独りで目的地へと向かったのだった。

 満開の桜花が尚隆を迎える。美しいはずの桜が色褪せて見え、尚隆は苦笑した。桜の根元に腰を下ろし、独り酒杯を傾ける。時はゆっくりと流れていった。風が吹く度にひらりひらりと舞い散る花びらだけが時の刻みを告げる。ちびちびと飲み続けた酒もなくなり、尚隆はその場に寝転んだ。

 まだ散るな。

 咲き誇る桜花を見上げ、尚隆は心からそう思った。まだひとりだ。この花はふたりで見るために探した桜。だから、まだ散ってはいけない――。

「――絶えて桜のなかりせば」
「春の心はのどけからまし」

 溜息とともに零れ落ちた古い歌の一節を、見事に続けた伸びやかな声。尚隆は顔を上げた。待ち人が、笑みを浮かべて立っている。刹那、満開の桜が鮮やかに色づいて見えた。

「――ほんとにね、桜がなければ、こんなにやきもきしたりしないんだけどね」

 いつ咲くか、いつ散るか。春はいつも桜に振り回される。そう続けて嘆息しつつも、伴侶は嬉しそうに目を細めて満開の桜を見上げる。

 ああ、やはり春の桜は緋桜とともに見なければ。

 胸に想いを秘め、尚隆はゆっくりと立ち上がる。そうして後ろから伴侶を抱きしめて囁いた。
「こんなにやきもきした春は初めてだ」
「ほんとうに。間に合ってよかった」
 無邪気に続ける緋桜を胸に抱いたまま、尚隆は低く笑うのだった。

2012.04.06.

後書き

2012/04/06(Fri) 18:06 No.342
 世の中に 絶えて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし
古今和歌集 在原業平

( 世の中にまったく桜というものがなかったら、 春をのどかな気持ちで過ごせるだろうに。)

 かつて七面鳥さんがこの歌で切なく素敵なお話を書いてくださいました。 とても印象的な歌だと思っておりました。 今回さくやさんがこの歌を写真と共に投稿してくださり、 甘い妄想をしてみたくなったのでした。
 また、今回尚隆の登場が少ない、との控えめな呟きをいただきましたので、 管理人、尚隆を書きたくなったのも事実でございます(笑)。
 七面鳥さん、さくやさん、尚隆をご所望くださった某さん、 ありがとうございました〜。

2012.04.06. 速世未生 記

存分に楽しんでくださいまし♪ 饒筆さま

2012/04/06(Fri) 22:10 No.354
 わあ! 待ちぼうけ中の尚隆氏に胸キュンです! ラブラブですねぇ〜!  ええ、もうこの後は存分に楽しんでくださいまし(笑)
 携帯電話が無い待ち合わせって、いろんな思いで胸がドキドキしちゃって ドラマになりますよね〜。 ええ、便利なアイツは情緒を台無しにしてくれます(苦笑)
 実は、私も手元で尚陽に挑戦中なのですが・・・大絶賛足踏み中です。 そ、そのうち献上いたしますっ(とほほ)

一緒に見たい ネムさま

2012/04/06(Fri) 23:15 No.357
  ニュースでニセコ町の入学式を映していましたが、雪なんですね…  まぁ北の大地は広いから、いろいろな地域がありますよね(^^;)
 きれいなものは一人でじっくり見たい時もあるけれど、 心底喜んで見てくれる人が一緒にいると尚楽しいですよね。 増してそれが大切な人ならば。平安のプレーボーイ・ 業平さんもやきもきするのが楽しかったんでしょう(笑)
 次は陽子視点でも書いて下さいね。

本当に! 空さま

2012/04/07(Sat) 18:12 No.359
 こちらのお二人のような方々が何人となくいらっしゃることでしょう。 (日本中皆さんそうかもですね)
 北の地にもその時を無事迎えられますようお祈りしております。 やはり、甘いお話は大好きです!
 やっと咲いた桜と、愛しい人の面影を胸に飛び出した、 尚隆さんのうれしそうなお顔が目に浮かびますね。

だって、一緒にみたいんだ(笑 senjuさま

2012/04/08(Sun) 11:19 No.365
 一緒のお花見が叶ってよかったですねー、殿(笑。
 おとなしく待たない辺り、ほんと殿らしいですよね。 で、桜を見上げながらも陽子さんのことばかりを想い巡らせちゃうなんて、 もう殿、可愛いすぎますから(笑。
 未生さま大好物の尚隆をご馳走様でしたー♪

ご感想御礼 未生(管理人)

2012/04/09(Mon) 06:55 No.386
 昨日の朝は一面銀世界だった北の国、今朝はしっかり道路が見えております。 今日はパンプスを履かなければならない日なので、ほっと安堵いたしました〜。
 レスが大変遅くなりました。ヘタレな管理人でごめんなさいね〜。

饒筆さん>
 待ちぼうけ尚隆をお楽しみくださってありがとうございます。 やっと会えたあとは、遠慮しないでラブ全開でしょうね(笑)。
 携帯がないとほんと待ち合わせは大変ですよね〜。 けれど、かの方は常世に携帯があっても持ってくれない方だと妄想してしまいます。 それで側近にまた青筋を立てられそう(笑)。 妄想が進むコメントをありがとうございました〜。

ネムさん>
 はい、今年の北の国はとにかく寒いです。 昨日は私の地元なんか吹雪で高速止まっておりましたよ!  いやはや、花ほころぶ春はまだまだ遠いです〜。
 はい、ふたりで見るための桜、やはり独りで見るのはきついようで(苦笑)。 業平卿のような境地にはまだ達しておりませんね〜。
 そのうち陽子視点も書いてみたいと思います。ありがとうございました!

空さん>
 桜の開花を待ちわびる人々は日本中に数多いらっしゃるでしょうね〜。 私もその一人でございます。
 陽子主上本人の前でもこれくらい素直になっていればまた違う関係かもしれませんね〜。 甘めのお話をお楽しみくださりありがとうございました!

senjuさん>
 尚隆の心の声を的確に表現する題名! 見てちょっと吹きました(笑)。
 はい、桜の花を見るよりも、表情豊かな緋桜を見る方が好みのかの方でございます。 尚隆好きなsenjuさんにお楽しみいただけて嬉しく思います!  ありがとうございました〜。

春ですね〜 由旬さま

2012/04/12(Thu) 15:23 No.450
 尚隆が待っている間、どことなく寂しげな桜が、陽子が現れた途端、 色を持って鮮やかに輝き出したように感じられました。 まるで尚隆の心境を桜が代弁しているよう。 このあと桜がもっと色づいて二人を包むこと間違いなしと思われます。

春ですよ〜 未生(管理人)

2012/04/13(Fri) 15:27 No.490
 雪が融け始めたら春でございます、じゃなくて!
 はい、桜が咲いたら春でございます。 頭も春色に染めてカッ飛んできたのに留守でがっくり、 満開の桜さえ色褪せて見えてしまう気の毒なかの方でございました。 緋桜が現れて喜んでいるのは、実はかの方だけではないでしょう。 桜も嬉しいのでは、なんて思いました。
 ご感想をありがとうございました〜。
背景画像 瑠璃さま
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