春を告げるもの@管理人作品第5弾
2012/04/26(Thu) 14:25 No.754
皆さま、こんにちは。
昨日はめでたく最高気温が20℃を超えた北の国、本日は春嵐でございます。
風が唸り声を上げ、時折家が揺れます。それでも、最低気温がふたケタになりましたよ!
今朝はストーブをタイマー点火にしなくて済みました。
春が来た、としみじみ思います〜。
さて、そめいよしのは4/23に山形、24日には秋田と盛岡にて開花いたしました。
そして、21日に長野、23日に仙台、26日には秋田と山形にて満開となりました。
桜前線、スピードアップしたようでございますね!
4/25発表の気象協会の予想によりますと、4/30に青森で開花し、
2日かけて津軽海峡を越え、桜前線の北の国到着は5/2でございます。
因みに我が街は4日。もう少しでございます!
いつも祭に拍手をありがとうございます〜。
下にも書きましたが、東北の皆さま、今が盛りの素敵な桜を恵んでいただけると
嬉しく思います。
管理人は久々に小品を仕上げました。よろしければお楽しみくださいませ。
- 登場人物 李斎・泰麒
- 作品傾向 ほのぼの
- 文字数 736文字
春を告げるもの
2012/04/26(Thu) 14:28 No.755
残雪を踏みしめて人々は黙々と歩く。雪が融け始めて尚、長い冬は終わらない。緩やかに融けてはまた一瞬で地を白く染め上げる雪は、戴の民から僅かな気力さえ奪っていくのだ。しかし。
昨日より確実に少なくなっている残雪を踏みしめて歩く李斎の顔は明るかった。雪が融け始めれば、春はすぐそこだ。吐く息はまだ白く、あちこちに雪が残る大地を眺めても、そう信じることができる。李斎は一歩前を行く背を見つめ、微笑した。
何もかもを覆いつくす雪景色の中で、淡い陽に輝く風花を愛で、膨らみ始めた花の蕾を見つけて慈しむ。長く無慈悲なこの冬さえも、いつかは終わる、と思わせてくれる、希望の光、それが、この戴国の麒麟、泰麒であった。
「――李斎」
不意に泰麒が振り返り、柔らかな笑みを見せた。はい、と答えて李斎は立ち止まる。また桜を見つけたのだろうか。蓬莱では春を告げる花だという桜の樹を。しかし、楽しげな貌をした泰麒は思わぬことを言った。
「雨だよ」
泰麒は嬉しげに目を細め、空に手を差し伸べる。つられて見上げると、李斎の顔にも小さな雨粒があたった。冷たい雨は身体に障る。李斎は少し慌てたが、泰麒は笑みを湛えたまま続けた。
「春が来たね」
虚を衝かれ、李斎は動きを止める。雪が融け始めれば春間近。そう思いつつも、身を凍えさせる冷たい雨に春を感じてはいなかった。冬に雨は降らない。そんなことも忘れていたの
か――。
「ほら、桜も喜んでいる」
微笑む泰麒の指の先には、少し膨らんだ花芽をつける桜の枝が揺れていた。春を告げる花は、この国にも息づいている。そして、国を慈しむ麒麟は、冬に打ちのめされている人々に春を告げる使者なのだ。
この温かな光が戴を包む日はきっと来る。そして、この尊い光を己が護るのだ。李斎はそっと胸に誓うのだった。
2012.04.26.
後書き
2012/04/26(Thu) 14:37 No.756
もう既に夏日を越えている地域の皆さま、まだ雪でごめんなさい。
通りかかった桜公園にはまだ残雪がございました。
今年はずっと寒くて、いつまでも雪がちらつきました。
けれど、忙しさに感けている内に、いつしか雨が降るのが当たり前になっておりました。
そんなわけで、戴に帰還した二人を書き流しました。
微妙に昨年書いた「春の光」の続きでございますが、読まなくても解ると思います。
戴がこんなふうに歩ける国であるかどうかは謎でございますが、
戴の人々には、雨が降るのは春だからだ、と思い出していただきたいものでございます。
2012.04.26. 速世未生 記
春告雨 ネムさま
2012/04/26(Thu) 21:48 No.757
年に2回位しか雪にお目にかかれない当地では、冬の冷たい雨は辛いものです
(雨自体が冬は少ないけど)。
でも雪の多い所では、雪から雨に変わる時が春なのですね。
3月から4月の札幌は観光に来ない方がいいよと、現地の人に言われましたが、
雨で泥んこになった土が芽吹きの土台になるのでしょう。
戴も混乱の中から瑞々しい芽が伸びてほしい、そう思えるお話でした。
早く北の桜が見られるますように!
春の足音 鷲生智美さま
2012/04/26(Thu) 21:54 No.758
管理人様が、お住いの地の春の足音をお知らせ下さるにつけ、
日本列島は長いのだなーと実感致します。
こちら(京都)はもう若葉の季節で、
自分はともかく豚児の夏服の用意などに追われておりますが、
これから春を迎える方々も多いのですね。
この作品も春の来る直前の、長い冬から(辛い時期から)解放される、
そんな期待に満ちたお話ですね。
原作者様の新刊で戴がどうなるかわかりませんが、
李斎と泰麒に花いっぱいの幸せな季節が巡ってきて欲しいと思います。
素敵な作品&お祭りの運営、有り難うございます!
芽吹きのとき 饒筆さま
2012/04/26(Thu) 22:05 No.760
泰麒の行く手には明るい光が、
その足跡には雪が融けて剥きだした土に芽吹く緑が見えました〜
(ジブ○的ですね・笑)
頑張れ、要クン。闘え、李斎!
本当に長い雌伏の時が流れたので、今こそ力強く芽吹いて欲しいです(新刊も!)
北国の桜、楽しみですね〜♪
慈雨 由旬さま
2012/04/26(Thu) 22:56 No.765
北国の冬は長いので、その分春の到来はさぞ嬉しいことでしょうね。
冬の終わりに雨が降る。それも忘れるくらい李斎は憔悴していたんだろうなぁ。
気付かせてくれた泰麒は、勿論戴の光ですが、李斎の希望の光でもあるのだと思いました。
寒さに耐え抜いた桜の蕾が力強いです。
ご感想御礼 未生(管理人)
2012/04/27(Fri) 11:10 No.767
皆さま、拙作に早速のご感想をありがとうございます。
ネムさん>
4月初旬、いつもの癖で傘を持たずに出かけて雨に降られ、凍え死ぬかと思いました。
真冬の粉雪なら頭を振るだけで済むのですが、
初春の冷雨に体温を奪われると一発風邪を引くのでございます。
しかも、雪が融けた喜びで春用上着なんか着ていると覿面(苦笑)。
それでも、春が来たから雨が降るのですよね〜。
いつか春が来ると思えるからこそ厳しい冬を耐えることができる。
泰麒には希望の象徴でいてほしいです。
温かく美しいお言葉をありがとうございました!
鷲生さん>
京都は若葉の季節ですか!
北の国は雪が融けたばかりで埃っぽく、枯れた草色でございます。
ほんとに日本は長いですよね〜。
北国の冬は長く厳しく辛いものですが、その分小さなことで嬉しい気持ちになれる。
泰麒にはそれを思い出させてくれる存在でいてほしいのでございます。
新刊、どこの国のどんなお話かまだ解りませんが、楽しみですよね!
祭運営への労いもありがとうございます。
楽しんでいただけて嬉しく思います〜。
饒筆さん>
おお、ご感想に情景が浮かびました。そして、ジブ○的、でくすりと笑えました。
いつもありがとうございます〜。
北の国の住人といたしましては、戴は他人事とは思えないのですよ。
ほんと、泰麒にも李斎にも頑張ってほしいです。
はい、北の国ももうじき桜が咲きますよ〜。
由旬さん>
はい、雪から変わる雨は正に慈雨でございます。
北の国の我が街では、通常真冬の約3か月間は雪しか降りませんからね〜。
「戴には光が必要です」と李斎は言いました。
きっと、李斎にも希望の光が必要だったのだと思います。
ああ、妄想が進むご感想をありがとうございます。
ちょびっとしか出ない桜に言及していただけて嬉しいです。
冬が寒くなければ桜は咲かないのだという話を聞いたことがございます。
私はそれからもっと桜が好きになったのでした。
背景画像 瑠璃さま