さくらびより@管理人作品第6弾
2012/05/02(Wed) 17:04 No.820
皆さま、こんにちは。我が街は今日も夏日寸前の気温でございます。
近所の桜もぼちぼち咲き始めた模様、
いきなり咲いた桜がぶわっと散ってしまいそう……!
本日5/2にえぞやまざくらが旭川にて開花いたしました。
函館を飛び越して道北の都で咲いてしまいましたよ!
今日も夏日を越えたので、桜も焦っているのでしょうか……。
いきなりの初夏に戸惑いつつ、管理人は連鎖妄想第3弾を仕上げました。
今回は#773桜蓮さん作「貴方に花を・3」及び
皆さまのコメントからの連鎖妄想でございます。
尚陽派の管理人が書くと、どうしても景→陽になってしまいますが、
どうぞお許しくださいませ。
※ 管理人の作品は全て尚陽前提でございます。
- 登場人物 景麒・陽子
- 作品傾向 ほのぼの
- 文字数 861文字
さくらびより
2012/05/02(Wed) 17:07 No.821
国主の執務室には誰もいなかった。書卓の上には書簡が積まれ、小卓には冷めかけた茶が置き去りだ。開け放たれた窓からは花の匂いが吹きこんでくる。どうやら主は春の誘いに屈したらしい。景麒は軽く溜息をつきつつ庭院へと向かった。
季節は春。空は霞む青、風は甘く香り、主が好む桜が次々と咲きほころびている。初めは隣国の主従に譲ってもらったものだけだった桜も、今では様々な種類のものが妍を競って咲き匂う。桜好きな国主のために側近が持ち寄った一重、八重、薄紅、淡紅、白、枝垂れなど、花期の違う桜が春の庭院を彩っていた。しかし。
景麒は花開く桜に目を留めることなく、足早に歩を進める。そうして、今が盛りと咲き誇る白桜の下に鮮やかな緋桜を見つけ、足を止めたのだった。
主は樹の下に坐りこみ、落ちた花を無心に拾っていた。花の終わりには花びらを散らすはずの桜が、花の姿を留めたまま落ちているらしい。掌一杯に花を載せた主は、笑みを浮かべて立ち上がった。景麒はゆっくりと主に歩み寄る。それだけで主は振り返り、笑みを見せた。
「ああ、景麒か」
「何をなさっておいでです?」
「桜を拾っていた」
主は事もなげにそう答え、散らずに落ちた桜花が幾つも載せられた掌を差し出す。少し首を傾げた景麒を見上げ、主は楽しげに説明した。
「花びらを散らすはずの桜が、こんなふうに落ちるのは珍しいからね」
白い桜花をひとつ手に取り、主は屈託なく笑う。景麒は脱力した。仕事を放ってすることではない。景麒は大きく溜息をついた。続けて諫言しかけた景麒に、主はすっと手を伸ばす。そうして持っていた白桜を景麒の口に押しこんだ。
「――お裾分けだ。お前もお花見を楽しめ」
主は景麒を真っ直ぐに見上げてそう言った。翠の宝玉は眩しい光を放ち、芽吹き始めた若葉よりも生き生きしている。そして、鮮やかな笑みは満開の桜花よりも美しく、景麒は息を呑んで主に見蕩れた。
「情けない貌をするな。ほら、綺麗だろう?」
主は楽しげに笑い、満開の白桜を見上げる。しかし、景麒は桜を咥えたまま、ただ匂やかな緋桜を見つめるばかりであった。
20012.05.02.
後書き
2012/05/02(Wed) 17:16 No.822
諫言を聞きたくない陽子主上と素直に主を褒め称えられない景麒をお送りいたしました。
桜蓮さん、コメントをくださった皆さま、ありがとうございました!
桜蓮さんの素敵な絵のイメージを壊していなければよいのですが……
(ドキドキ。管理人も投稿するときは緊張したりいたしますよ〜/苦笑)。
2012.05.12. 速世未生 記
やるなぁ〜 ネムさま
2012/05/02(Wed) 17:54 No.823
お小言を聞きたくないから、花を景麒の口に突っ込んでしまうー
「万里」の頃の陽子なら、こんな大胆な事は出来なかったでしょうね。
こんなじゃれ合いは親しいからこそ。
不器用同志の主従が辿った道のりを想像すると、微笑ましいです。
桜蓮さんの温かい色合いのイラストが浮かんでくるお話ですね。
春はほのぼの〜♪ 饒筆さま
2012/05/03(Thu) 00:56 No.830
陽子さんのキラキラ笑顔が浮かびますね〜&
絶句している仏頂面さんもまさに桜蓮さまの作品通りに!(笑)
いいじゃん、しばらく一緒にお花見しようよ♪ ね、台輔。
春らしい「ほのぼの」を満喫させていただきました〜。
開花情報とご感想御礼 未生(管理人)
2012/05/03(Thu) 08:16 No.834
上でBaelさんもおっしゃってましたが、
5/2の午前中に開花いたしました旭川のえぞやまざくら、
なんと午後には満開を迎えてしまったそうでございます!
今朝の新聞でも全国初と騒がれておりました。
また同日、道南の都・函館にて、そめいよしのが開花、札幌でも満開となりました。
拙作にご感想をありがとうございました!
ネムさん>
そうですね、「風の万里〜」の頃には慶国主上の間には緊張感がございましたね〜。
それが「黄昏の岸〜」の頃には信頼関係を感じられました。
後々こんなふうにじゃれあえる関係になってほいいな、との願望も籠めてみました(笑)。
桜蓮さんのイラストに合っていましたか、
嬉しいお言葉をありがとうございました!
饒筆さん>
そうそう、実は二人でお花見、とっても嬉しいはずですよね!
素直でないからこそもらえたお裾分けかもしれません。
桜蓮さんの作品の通りとのお言葉、ほっと安堵いたしました。
ありがとうございました〜。
おお! 桜蓮さま
2012/05/03(Thu) 20:15 No.841
拙作に素敵なお話をありがとうございます!
描いている最中は『迷惑そうな仏頂面』としか思えなかった景麒ですが(笑)、
お話を読んで陽子主上に見とれているように見えてきました。
そして彼の視線の先の鮮やかな緋桜陽子主上も。
本当にありがとうございましたー!
ご感想御礼 未生(管理人)
2012/05/04(Fri) 07:10 No.849
桜蓮さん、温かなお言葉をありがとうございました!
元ネタを描かれた方にお楽しみいただけて嬉しく思います〜。
景麒は仏頂面をしていてもシアワセを感じているはずでございますよね(笑)。
そうですね! 空さま
2012/05/06(Sun) 13:50 No.888
「金波宮桜花楼」という呼び名がふと浮かんでまいりました。
もちろん正式な名称はあると思うのですが、赤楽の歴史が進むにつれて、
その一角が通り名として呼ばれていたら良いなあと思いました。
台輔のお顔、まさに桜蓮さまの絵のようだと思いました。
素敵な連鎖妄想ありがとうございました。
金波宮桜花楼! 未生(管理人)
2012/05/09(Wed) 13:23 No.921
空さん、素敵なお言葉をありがとうございました。
「金波宮桜花楼」、できたらよいですよね〜。
桜蓮さんの絵のような景麒と思っていただけて嬉しく思います。
こちらこそご感想をありがとうございました!
鮮やか 海さま
2012/05/18(Fri) 21:52 No.1052
未生さまの景→陽を堪能できるのもお祭りの醍醐味ですね(笑)
白、赤、金、翠と春の日差しを浴びて鮮やかな色合いが、
桜蓮さまの絵と対になるはずの陽子の図を想像させてくれます。
ご感想御礼 未生(管理人)
2012/05/19(Sat) 21:07 No.1065
慶国主従は鮮やかで麗しい一対ですが、景麒は主を胸の内で褒め称えても、
己が美しいとは思っていないのでしょうねぇ。
確かに祭だからこそ、
私も普段あまり書かない景麒を書くことができるのかもしれません。
景陽派の海さんにお楽しみいただけて嬉しく思います!
ご感想をありがとうございました〜。
背景画像 瑠璃さま