「管理人作品」 「12桜祭」

花散時@管理人作品第9弾

2012/05/20(Sun) 14:11 No.1077
 皆さま、こんにちは。祭最終日でございます。 ラストスパート中の管理人、頭はすっかり末声モードでございます。 短いものをひとつ投下いたします。
 拙作#1036「春慶の夢幻」続編、語り手は名もなき少年長じて青年、 陽子主上登遐後のお話で、更に捏造過多でございます故、 苦手な方はご覧にならないでくださいね。

花散時

2012/05/20(Sun) 14:13 No.1078
 春の風に花びらが舞い散る。そんな薄紅の花吹雪を、老師は笑みを湛えて眺めていた。穏やかでいて懐かしげなその貌。青年は不意に既視感を覚えた。

 あれは、ほんの子供の頃。古の女王の形代と言われる見事な紅枝垂れの花を眺める若者がいた。花見の喧騒を寄せつけぬ静謐さを纏った若者を、息を呑んで見つめた。そして、その静寂に耐え切れず、声をかけてしまったのだ。若者は驚きもせずに頷き、懐かしげに古の女王を語った。彼女は美しい緋色の髪をしていた、と。
 紅枝垂れを見る度に、あの若者を思い出し、不思議な郷愁に駆られる。見たこともない古の女王が、佇んでいるような気さえする――。

 青年は桜を見上げる老師を黙して見守った。慶の者は皆、心に抱く桜を持つ。桜に想い出を重ね、咲いては散る花を飽かず見つめるのだ。幾年も幾年も、春が来る度に。

 いつか、あなたの桜の話をお聞かせください。

 青年は胸で呟き、桜と語り合う老師に深く頭を下げた。

2012.05.20.

後書き

2012/05/20(Sun) 14:17 No.1079
 捏造過多でごめんなさい。 浩瀚は野に下り義塾を営みながら老いているとの妄想でございます。
 少年は大人になり、声をかけたい気持ちを抑える術を学んだ、 というところでございましょうか。もっと老成し、 老師の問わず語りを受け止められる人に育ってもらいたいものでございます。 お粗末でございました。

2012.05.20. 速世未生 記

願わくば 饒筆さま

2012/05/20(Sun) 23:13 No.1121
 「願はくは花のもとにて春死なむ」という西行の歌を思い出しました。 いつか老師が永久の眠りに着く前に、紅の花の夢が訪れてくれたたらいいな・・・ と願います。
 青年よ、キミもキミの桜の話を抱けるように頑張りな!
 ほろりと偲ばれる御話をありがとうございました。

ご感想御礼 未生(管理人)

2012/05/21(Mon) 13:02 No.1138
 捏造満載末声小品にご感想をありがとうございました。
 登遐する前、陽子主上は浩瀚に「命を粗末にするな」とばかりに 国を託したのではないかと妄想いたします。 春には様々な想いを胸に桜を見上げることでございましょう。
 西行の歌は私も大好きでございます。 思い浮かべてくださってありがとうございました。
背景画像 瑠璃さま
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