「管理人作品」 「13桜祭」

桜の頬@管理人作品第1弾

2013/03/13(Wed) 14:04
 本日3/13、気象庁より福岡にて最初のそめいよしのが開花したと発表されました。 ええ〜〜〜! 管理人、久々の早い開花に顎が落ちそうになりました。 気象庁の「2013年のさくらの開花情報」を覗いてみて焦りました〜。 第1弾、推敲終ってない! 題名決まってない!
 先ほど漸くすべての準備が終了いたしました。 今年も祭を始めさせていただきます!

 投稿掲示板へようこそいらっしゃいました。 ひっそりと、こっそりと、皆さまのご参加をお待ち申し上げております。
 投稿の見本も兼ねて、管理人作品第1弾を投下いたします。 よろしければお楽しみくださいませ。

※ 管理人の作品は全て尚陽前提でございます。

桜の頬

2013/03/13(Wed) 14:11 No.2
 桜の季節に催される感謝の宴。桜花咲き匂う金波宮の庭院に、賓客が次々と訪れていた。泰麒捜索の折にも宮に滞在した延王延麒や氾王氾麟の他、恭国供王、奏国公主が集う雅やかな宴である。
 準備に奔走した女史祥瓊は、現れた高貴な客人たちに笑みを向け、静かに叩頭した。賓客は笑いさざめきながら通りすぎる。そんな中、祥瓊の前で足を止めた人物がいた。

「――伏礼の仕方を覚えたのね」

 聞き覚えのある若い声。祥瓊は僅かに唇を緩める。辛辣な物言いだが、口調に棘は感じられない。恐らく、思うことを率直に口に出しただけなのだろう。祥瓊は素直にはいと応えを返した。
「顔を上げなさい」
 賓客の命に、祥瓊はおもむろに身を起こす。他国の王宮を訪れるに相応しい豪奢な衣装を身に纏う供王珠晶がそこにいた。その目に蔑みの色はない。かつて元公主であった祥瓊を奚に任じた少女王は、視線のみで祥瓊を促した。
 祥瓊の胸に己の辿った道が去来する。義務を怠り、権利だけを貪っていた愚かな公主だった。新たな道を用意してくれた人を恨み、真実を指摘してくれた人を憎んだ。その挙句、顔も知らぬ人を傷つけようと企んだ。そんな愚かしい娘だった。けれど、見捨てずに付き合ってくれた人がいた。柳から雁を共に旅し、慶へと送り出してくれた人が。

「――かつて知ろうとしなかったことを知りました。そんな機会を与えてくださった供王さまに感謝申し上げます。同時に、芳国恵州侯と我が主上にも」

 楽俊。

 胸に銀の髭をそよがせる友の顔が浮かぶ。楽俊のお蔭でここまで来られた。御物を盗んで逃亡した祥瓊に温情を下してくれた供王に謝意を伝える機会を与えてもらえた。

 感謝の念があれば自然に頭は下がるもの。

 そう言ったのは自身への伏礼を廃した我が主。今、供王珠晶を前に、祥瓊は深く頭を下げる。かつての無礼を詫び、恩赦に感謝を示すために。

 一度くらい本心から謝ってみろ、と閭胥に打ち据えられた芳の里家でのあの日。そして、伏礼する度に屈辱に塗れていた霜楓宮での日々。今なら分かる。嫌々頭を下げても、それは形だけ。決して礼を尽くしたことにはならないのだ。

「――人は、変われるものなのね」

 吐息のような声がした。衣擦れの音が近づく。柔らかな気配が祥瓊を促した。祥瓊は顔を上げる。供王珠晶が笑みを浮かべて手を差し伸べていた。祥瓊は大きく目を見張る。

(王は自ら斃れるもの)
(あたくし、あなたが嫌いなの)

 きつい言葉ばかりを浴びせられてきた。そうされても仕方のない態度を取っていたのだ、と己を省みてもいた。しかし、誇り高き供王が、こんなふうに歩み寄ってくれるとは思ってもみなかった。

 供王さま、ありがとうございます。

 その一言が声にならなくて、祥瓊は瞳を潤ませる。供王珠晶は祥瓊の手を取り、苦笑交じりに声を上げた

「あなたは景王のお友達なのでしょう。一緒に宴の席に着きなさい」

 意外なほど小さい、その手。祥瓊は一国を支える小さな尊い手を押し頂き、はい、と応えを返した。大袈裟ね、と呟く少女王の頬が、ほんのり桜色に染まっている。立ち上がった祥瓊は、笑みを浮かべて涙を拭いた。

2013.03.13.

後書き

2013/03/13(Wed) 15:07 No.3
 管理人作品第1弾「桜の頬」をお届けいたしました。 連作の一編ではございますが、読んでいなくてもお解りになると思います。 いつか和解してほしい二人のお話でございます。お粗末でございました。

(因みに、「夜話(本館)」長編「黎明」余話内短編「再会」、 御題其の百十三「供王の思惑」、「十二国記で12題」其の六「毅さ」、 御題其の百四十六「供王の結論」の続編でございます)

2013.03.13. 速世未生 記

祝! 桜祭開催 griffonさま

2013/03/13(Wed) 18:20 No.4
 ああ・・・乗月では中途半端に放り出された感もありましたが、 いつかこうして珠晶と見える日が訪れると良いですよねぇ。
 珠晶って物言いはキツいけど、ちゃんと見てる人ですから。 万里以降の祥瓊ならば、たぶん普通に笑顔で話もするでしょうし、 「王の友人」と言う常世では稀有な、 でも陽子の身内らしい立ち位置も飲み込んでくれそうですしね。

 このパーティー・・・恵侯も来るのかなぁ〜・・・ どのタイムラインかにもよるでしょうが・・・ 恵侯とのシーンも見てみたい気がします。

 目の辺りはうるうるしながらも口元は思わず微笑んでしまう、 お花見パーティーの舞台裏に相応しいエピソードで・・・ モニターを見ながらウンウンと頷きつつ読ませていただきました。

お祭り開催ありがとうございます 饒筆さま

2013/03/13(Wed) 22:01 No.5
 わあい♪ 今年もまいりましたね、桜の季節!  お祭りの開催おめでとうございます&ありがとうございます!
 ……確かに、私も本日ニュースで聞いて耳を疑いました(開花早ッ!!) 開宴お祝いも持参できず申し訳ありません(まだ白紙・涙)

 「桜の頬」カワイイでしょうねえ〜(ぽっ)  きっと招待状をもらった時から楽しみにしていたんでしょうね。 己の非を認め謝罪するというのはとかく難しいものですが、真の矜持を得た今は、 祥瓊と珠晶がそれぞれ互いを温かく照らしているような、 こそばゆい誇らしさや嬉しさを感じますね(うるうる)  これからは改めて、佳き関係を築いて欲しいものですね!

 恵候は(結構意固地なので)宴への参加を辞退するかもしれません…。 でもやっぱりいつかは再会して欲しいなあ(願望)

桜祭開催を寿ぐ 五緒さま

2013/03/13(Wed) 22:29 No.6
 昨日でしたか、標本木ではないけれど蕾がほころびかけている、という話をしたのは。 ここのところ20℃超えの気温が続きましたからね〜(溜息)  ツイッター見て驚きました。 近年、高知と私の居住地のどちらかが一番最初の開花宣言をしているような気がします。

 祥瓊は珠晶に逢えたことによって、身の裡に凝っていた澱みが消え去り、 さらに輝いていくような気がします。

わくわくしますね senjuさま

2013/03/13(Wed) 22:42 No.7
 私もついさっきの夜のニュースで開花を知って顎を落とした一人です。 そんないきなり云われましても(笑。j
 今年もお祭りの開催をありがとうございます。 今年はまたどんな桜を愛でられるのかと、とてもわくわくします。

 「桜の頬」は思いがけないスターターでしたが、 思ってみれば誰よりもその頬の似合う御方でございました。 差し出された小さな手の桜色の爪も目に浮かぶようです。 盛装の彼女はさぞかし可愛いんだろうなぁ。。。

桜祭開催おめでとうございます 晋青緑さま

2013/03/13(Wed) 22:57 No.8
 桜の開花のニュースを見て、すぐに未生さんの事を思い出しました。 早い開花でしたよねー。
 予想外の早さにビックリですが楽しいお祭りが早く始まって心躍っております。 きっと祭り開催準備大変だったと思います、お疲れ様です^^ 今年もお祭りを楽しませて頂きますね〜。

 第一弾の作品、桜色に頬を染めた珠晶の姿を想像してほっこりしました^^ いつかこうして二人が出会えると良いですね。

ご感想御礼 未生(管理人)

2013/03/14(Thu) 15:51 No.12
 皆さま、祭開催を寿いでくださり、ありがとうございました。
 本日の北の国は冷たい北風が吹き荒び、日中でも−3℃。 昨日の陽気とは一転して冬将軍殿が盛り返しております。 昨日雪が融けてぐちゃぐちゃだった道路が凍り、その上に新たな雪が積もり、 恐ろしい状態でございます。 お蔭さまで昨日はダメだったそりを使えましたが(笑)。

griffonさん>
 griffonさんの染井吉野ツイート、焦りましたが、 準備の速度を上げることができました。ありがとうございました〜。
 原作「風の万里〜」「乗月」で少しだけ出てきた祥瓊と珠晶のエピソードは 私の妄想を刺激して已みませんでした。拙作にご共感をありがとうございます!
 恵侯は、「泰麒捜索に関与できなかったから」と 参加を固辞したののではないでしょうか。そんなふうに思います。

饒筆さん>
 ほんと早い開花ですよね〜。 私なんか、月曜にがっつり除雪をいたしてりますので、 真面目に顎がっくんでございました(苦笑)。
 「桜の頬」をご想像くださりありがとうございます。 きっと可愛いと思います〜。恵侯については同感でございます!

五緒さん>
 はい、五緒さんの染井吉野ツイートの後で更に焦って準備いたしました。 ほんとに咲いちゃいましたね!  近年ほんと福岡と高知が競ってますね〜。調べちゃいました。 09福岡、10高知、11静岡、12高知、そして13福岡でございました(笑)。 13日開花は09年福岡以来でございますよ!  10年高知は10日でございましたが(苦笑)。
 拙作にご感想をありがとうございます。 祥瓊も禊を終えた気分だろうと思います〜。

senjuさん>
 いや、ほんと、いきなりでしたね〜。
 今年の第1弾はこれと決めておりました。 今まで、浩瀚、桜、浩瀚、尚隆、景麒、陽子と書いてまいりましたが、 今年語りたがったのが祥瓊でございましたので(笑)。
 そうですね、頬だけではなく、きっと爪も綺麗な桜色なのでしょうねぇ。 珠晶はそういうところも考えていそうです。盛装姿、見てみたいものですねぇ。

晋さん>
 思い出していただけて光栄に思います(にっこり)。
 早咲きの桜の話題が出る度にドキドキしておりました。 染井吉野がほころびかけたと聞いて、焦りまくりました。 無事当日に祭を始められてよかったと思います!  お楽しみいただけると嬉しく思います。
 拙作にほっこりしてくださり、ありがとうございます!  こんな日が来るといいなと私も願って已みません。

桜祭開催おめでとうございます ネムさま

2013/03/14(Thu) 22:51 No.17
 春眠暁を覚えず…また遅刻しました m--m  でも今年も“また”と言えたことがうれしいです。 未生さん、お忙しい中、今年もお祭りを開催して下さり、 お祝いと共に感謝を申し上げます。

 珠晶と祥瓊ですか! こうして穏やかに並んでいれば、美少女二人、 絵になりますね(名前からして二人して玉=ギョクが入っていますし)。 宴は大いに盛り上がったことでしょう。  珠晶は本当に以前の祥瓊が嫌いだったでしょう。 でも人は変わることが出来るという事を目の当たりにして、 彼女の中でもまた新しい変化があるかもしれませんね。
 始まりにふさわしい爽やかなお話でした。

ありがとうございます! 未生(管理人)

2013/03/15(Fri) 13:04 No.25
 ネムさん、祭開催を寿いでくださってありがとうございます〜。 第1弾書けなかったら止めようかなとかちょっと思ったりいたしました(笑)。
 拙作にご感想をありがとうございます。確かに二人とも美少女でございますよね〜。 そして、おっしゃるとおり字に二人とも玉を表す漢字が入っておりますね!  宴を華やかに彩ってくれたことと思います(笑)。

桜の頬 空さま

2013/03/17(Sun) 22:10 No.45
 こちらのお二人がこんな形でまたお互いに会うことができたなら、 本当によかったと思いました。 国外追放という形である意味許された祥瓊には、 彼女のほうから近づくことはできなかったはずですから。 これも桜の宴が取り持つ「縁」ということになるのでしょうか。
 薄紅の花びらの下で涙をためた祥瓊の姿が見えるようです。 素敵なお話、読むことができて幸いです。

ありがとうございます 未生(管理人)

2013/03/19(Tue) 16:05 No.63
 空さん、今年もいらしてくださりありがとうございます。 また、拙作にご感想をありがとうございました。
 そうですね、国外追放を宣告された祥瓊からお礼をしに行くことはできませんので、 二人が会うとしたらこういう感じかなと妄想いたしました。 美しい祥瓊を思い描いていただけて嬉しく思います。
背景画像「四季の素材 十五夜」さま
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