「 飾り付け中 」
絵 ・ 文茶さま
かの方の贈り物
「ちょっと借りていくぞ」
相も変わらず唐突に現れた賓客は強引に国主を攫っていく。目を白黒させる景王陽子を当然のように連行する延王尚隆を止められる者などいるだろうか。下官の報せに慌てた宰輔が現れた頃には慶主はもう禁門を飛び立っていたのだった。
「――強引すぎる!」
冬至が終わり、新年の準備が進んでいる。宮を空ける暇などないというのに。怒りを露にする陽子に、伴侶は大きく笑ってみせた。
「そう怒るな」
見せたいものがある、と連れてこられたのは、堯天を北に上がった山沿いの廬だった。勝手知ったる様子で騎獣を横付けて、伴侶は山小屋へと陽子を導く。
「わあ……!」
陽子は思わず声を上げた。背の高いクリスマスツリーが中に鎮座している。その横には大きな箱があった。振り返って目で訊ねると、開けてみろ、と返される。陽子はそっと箱を開けた。
「可愛い!」
中身はツリーを飾る小物。ぎっしりと詰めこまれた可愛い飾りに、陽子は目を輝かせた。そういえば、今日は蓬莱でいうクリスマスだ。
「すっかり機嫌が直ったな」
得意げな貌を見て、陽子は眉間に皺を寄せる。が、それも長くは続かなかった。少しだけ唇を尖らせて、陽子は言い放つ。
「――六太くんにお礼を言っておいて」
「運んだ俺に礼はないのか?」
「これをつけてくれたら言ってあげる」
片眉を上げる伴侶に、陽子は笑顔で星の飾りを渡した。やれやれ、溜息をつく伴侶はゆっくりと立ち上がる。そして窓の外に目を向けた。
「見てみろ」
笑みを浮かべる伴侶に促され、窓を見る。陽子はまたも歓声を上げた。
「雪だ!」
「日頃の行いがよいらしいな」
そう言って笑う伴侶に、今度は素直に笑顔を向ける。ありがとう、と小声で告げると、伴侶は人の悪い貌を見せた。
「――雪が降っては帰れぬな」
「――?」
陽子は首を傾げる。伴侶はくすりと笑ってツリーの天辺に星をつけた。
2018.12.25.
「 寒がりな彼女 」
絵 ・ 文茶さま
「寒い……さむい……」
「分かったから。もう少し我慢しろ」
宥めるようにそう言う声が、楽しげに聞こえるのは気のせいだろうか……。
2018.12.25.
祭でお馴染み文茶さんからクリスマスプレゼントをいただきました! わ〜い♪
嬉しくて勢いでつけたワンライ挿し文はどうぞお気になさらずに。
「ちょっとクリスマスっぽい尚陽」とのリクエストにお応えいただきました。
嬉々として飾り付ける陽子主上が愛らしゅうございます。
そしてオマケは蓬莱編。寒そうにしがみつく陽子主上、それなのに尚隆ちょっと余裕……(笑)。
はやく温めてあげて〜。
文茶さん、いつもながら素敵な尚陽と萌えをありがとうございました!
(無断転載厳禁。勝手にお持ち帰らないでくださいね!)
2018.12.25. 速世未生 記
背景画像「翠琅庵」さま