其の一「流れ」@管理人作品第12弾
2010/10/15(Fri) 17:21 No.147
素敵な作品や温かなご感想をいただきながら、ヘタレな管理人は本日全く余裕がございません。
大変失礼ながら、レスは明日纏めてさせていただきます。
ついでながら、もうひとつくらい出したいので、明日まで再延長いたします。
これが終わったら燃え尽きて今持ってるネタを出しそびれる気がいたしますので。
どうぞ生温かい目で見守ってくださいませ(伏礼)。
というわけで、懸案の利広をどうぞ。
- 登場人物 利広・文姫
- 作品傾向 シリアス
- 文字数 960文字
「十二国記で12題」其の一
流 れ
2010/10/15(Fri) 17:23 No.148
なんだかそわそわする。
ひとつ溜息をつくと、利広は筆を置いた。書卓に向って筆を動かす己には、もうかなり慣れてきたはずなのに。
ゆっくりと立ち上がり、窓辺に歩み寄る。ここのところ真面目に仕事をしていただけに、外の空気が恋しいと思う。それでも、ふらりと王宮を抜け出す気分にはならなかった。そんな殊勝な己を可笑しく思いながら、利広は園林に出た。
川が流れている。庭を彩る装飾の一部のような小さな川。さらさらと涼しげな音を立てて流れるその川を見つめ、利広は唇を緩めた。おもむろに腰を下ろし、手近な草の葉で小さな舟を作る。そうして、そっと川に浮かべた。
草舟はゆっくりと流れ始める。時折向きを変えながらも、小舟はゆったりとした流れに乗って滑るように進んだ。利広は小舟を追って川辺を歩いた。
上から見れば一目瞭然の流れ。しかし、川に浮かべられた小舟はただ流されるだけで、行きつく先はよく見えない。物にぶつかって回ったり、風にあおられて傾いたりもする。利広は己が浮かべた小舟が翻弄される様をただ眺めた。この川は小さな滝となって雲海に流れこむ。こんな小舟はそこまで保つまい。
己も川に浮かぶ小舟のような存在だ。如何に長く生きようとも、所詮は歴史に流され、やがて消えていく。余所の国が興り、栄え、衰えていく様を客観的に観察し、分析していても、それはいつか己の身にも降りかかること。
いま、自国で仕事をしている。それは、いま、ここにいる必要があるからなのかもしれない。そわそわと気が逸るのは、この先に何かが起こるからなのかもしれない。それが何なのかは分からないが。
流れに身を任せる。たまにはいいじゃないか。行きつく先が分からないからこそ今を楽しめる。視界から消えゆく小舟を眺め、利広はひとり微笑した。
兄さま、と呼び声がする。妹が探しに来たらしい。よくぞここが分かるものだ、と利広は苦笑する。まだ王宮の外に抜け出す気はないはず、と信用されているのだろうか。利広はゆっくりと堂室へ向かう。放蕩者の兄を見つけた妹は大きく手を振った。
「そろそろ仕事に飽きがきているはずの兄さまにお茶でも振舞おうと思うのだけれど」
「気が利くね、文姫」
茶目っ気たっぷりな妹に笑みを返す。物想いは終いにしよう。そうして利広はこの流れを共に生きる同志でもある家族の許へと戻っていった。
2010.10.15.
後書き
2010/10/15(Fri) 17:28 No.149
第一の御題「流れ」は利広で書こうと決めておりました。
けれど、利広は窓辺に腰かけたまま遠くを見つめ、どうしても語ってくださいませんでした。
待ち続けること一月半、漸く語り始めてくださり、ほっと安堵の息をつきました。
いやはや、大して中身のないお話なのに時間ばかりかかってしまい、我ながら呆れてしまいます。
やっぱり、利広は大好きだけれど、書きにくいのかな〜とも思いました。
2010.10.15. 速世未生 記
わ〜〜い 再延長! 空さま
2010/10/15(Fri) 21:46 No.150
ごあいさつにきたらラッキーでした!
ちょうど今、リハビリに十二国記を読みなおし始めたところなんですが、
王宮には小川が流れている話を読んだばかりなので、
妙にリアルにこの小舟の話が迫ってきました。
800年は半端じゃないので、推し量るのが空には難しいのですが、利広さんの言葉(というか、
思い?)はやはり重みがありますね。
この方は家族がいて良かったですよね〜(うんうん)妙に納得する空でした。
素敵なお話、ありがとうございました!
再延長ばんざ〜〜い!!
万々歳〜! 黎絃さま
2010/10/16(Sat) 00:32 No.152
原作でも利広の物思いは重たいし、尚隆とはまた違う憂鬱さがあって、
けして楽しい気持ちだけでは読めません。
でも今のところは、その憂鬱より家族に対する愛情の方が勝っているという感じですね。
最後は文姫のみならず利広にも健気さを感じる場面で、キュンときます。
素敵なお話をありがとうございました。
あはは(乾笑) 未生(管理人)
2010/10/16(Sat) 22:31 No.178
空さん>
再延長を喜んでいただけて嬉しいです〜。
そうです、原作では王宮に小川が流れておりますよね。
確かあったよな〜と裏を取りながら書きましたので、お解りいただけて満足でございます。
黎絃さん>
利広好きの黎絃さんにおたのしみいただけて嬉しく思います。
尚隆にしても利広にしても、明るいだけではない奥深さが好きなのでございます。
こちらこそありがとうございました。