其の九「繋り」@管理人作品第13弾
2010/10/16(Sat) 17:15 No.160
長い沈黙に終止符を打ち、この辺で悪足掻きを止めようと思います。
皆さま、ご迷惑をおかけいたしました!
それでは「黄昏の岸〜」幕間の十本目の御題をどうぞ。
- 登場人物 氾王・氾麟・陽子
- 作品傾向 シリアス
- 文字数 748文字
「十二国記で12題」其の九
繋 り
2010/10/16(Sat) 17:17 No.161
「今度は是非、範に遊びに来てくりゃれ。景女王にお似合いの襦裙を用意して待っているぞえ」
「範の装飾品はどれも素敵なものばかりよ、陽子」
氾王と氾麟が帰国の際かけた言葉に、景王陽子はただ苦笑していた。その様はあまりに若くて、諸国が一致して泰麒の捜索をする、という斬新な提案をした女王とは思えない。氾王は微笑した。
戴の政変を、諸国はただ静観していた。独立不羈を尊び、国交も盛んではないこの世界において、一国のために諸国が協力するなど、有り得ないことであった。それを、若き景王がやってのけた。しかも、未熟な己では諸国を動かすことができない、と北の大国雁を動かしたのだ。
雁から鸞が届き、氾王は少なからず驚いた。その内容もさることながら、あの延王尚隆が動いたことに、だ。国境を接した慶とは違い、戴と雁は虚海を隔てている。ならば慶のために動いた雁も、戴のためには動くまい、と思っていたのだから。
氾王は俄然景王に興味を持った。雁の支援を受けて起ちながら、その雁を動かした若き女王はどんな人物か、この目で確かめてみたいと思ったのだ。折しも慶には戴の将軍が滞在しているという。そして、氾王の手には、戴から届いた玉の中に紛れていた、氾王が戴王即位のお祝いに用意させた腰帯の断片があった。
延王の要請を無視して慶に向かったが、それだけの価値はあっただろう。七カ国の協力により、泰麒は蓬莱より帰還した。そこまでの道はもちろん平坦ではなかった。そして、問題は今なお山積みだ。が、当面の目的は達せられたのだ。
今回のことで結ばれた幾つもの絆。この繋りは、きっと今後に生かされるであろう。そして、この若き王が国を纏め上げたなら、世界は大きく変わるのではないか。それまで慶を見守るのも悪くない。そう思いつつ、氾王は帰途についたのだった。
2010.10.16.
後書き
2010/10/16(Sat) 17:25 No.162
久々にご登場の氾さまでございます。
実は氾さま視点の作品はほとんどございませんでした。
楽しい御仁ですが、やはり書くのは難しい……
(お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、
長編「黄昏」第42回の氾さま視点でございます)。
2010.10.16. 速世未生 記
Re:繋り 黎絃さま
2010/10/16(Sat) 20:31 No.168
小娘の新米王が延王を動かしたという事件は普段尚陽派でなくとも
妄想を引き立てられる場面です。
延王って「月の影〜」ではおせっかいものかと思いきや、戴に対する従来の姿勢は
意外と保守的(ある意味まっとう)……だったのに、陽子が彼を動かした。
一体どんな子だろうと興味が沸くのは同業者として自然だと思います。
空も! 空さま
2010/10/16(Sat) 21:11 No.172
氾王は好きなのですが、表現が難しいです。
特に話し方とか。その点未生さまは自然にこなしていらっしゃて、すごいです!
ところで、氾王は陽子さんと尚隆さんとの関係に気付いたのでしょうか??
未生さまのお話をまだ読み切っていないかもしれないので、
よろしかったらこっそり教えてくださいませ。
遅くなりましたが 未生(管理人)
2010/10/18(Mon) 06:21 No.195
やっと御礼できる状態になりました。大変失礼いたしました。
黎絃さん>
「黄昏の岸〜」は視点を変えて何度も読み直しました。
ほんとに妄想を掻き立てられるのですよね〜。ご賛同ありがとうございました。
空さん>
氾さま、上手く書けていたでしょうか。お褒めのお言葉嬉しいです!
私的勝手妄想では、氾さまはお気づきでございます(笑)。
管理人の作品は今や膨大な数になっておりますので、読み切るのは結構大変だと思います。
なので、無理なさらず、お好きなものをご覧くださいませ。
ご質問の件につきましては、本館「黄昏余話」より「氾麟の涙」辺りに
少し匂わせてあると思います。お時間のありの際にでもどうぞ!