其の一「宝重」@管理人作品第6弾
2017/10/06(Fri) 00:43 No.196
皆さま、こんばんは〜。いつも祭にレス及び拍手をありがとうございます。
本日の北の国、最低気温は6.4℃、最高気温は15.8℃っでございました。
指標のお山が初冠雪を記録いたしました。
雪虫情報よりも早いとは驚きでございます。
冬将軍殿、そんなに張り切らなくてもよろしいのですよ……?
さて管理人は第6弾を仕上げました。
今回は舞台は慶ですが、雁の宝重の小話でございます。
笑っていただけると嬉しゅうございます〜。
- 登場人物 陽子・六太
- 作品傾向 コメディ
- 文字数 783文字
「十二国で十二題」其の一(雁)
宝 重
2017/10/06(Fri) 00:47 No.197
「水禺刀。碧双珠。蠱蛻衫。鴻溶鏡。呉剛環蛇」
知っている宝重を思いつくままに挙げてみる。慶、範、漣。もしかすると、塙麟が肩に乗せていたあの鸚鵡も巧の宝重なのかもしれない。喋る鳥はあっても、さすがに刃物を吐き出す鳥などそうそうないだろう。そこまで考えて、景王陽子は賓客に眼を向けた。
「前から気になっていたんだけど」
「んー?」
「雁に宝重ってないんですか」
いつもの如く気儘に現れて小卓に座りこむ延麒六太は、茶菓子を選びながら軽く答えた。
「あー、きっとどっかにあるぞ」
「え!? どんなものなんですか」
隣国の宰輔の思いがけない答えに、陽子は思わず身を乗り出した。小卓の上で選んだ菓子を齧る六太は喰いつく陽子にさほど関心を示さない。
「どんなものって言われてもなー」
「延麒!」
陽子が焦れて叫ぶと、六太は初めて陽子に視線を向けた。そしてまたも意外なことを言う。
「あ、尚隆には内緒だぞ。大昔に売っ払ったことになってるからな」
「なんですか、それ」
陽子は訝しげに首を傾げる。六太はにやりと笑って種を明かした。
「あいつの登極当時、雁は貧乏でな。金目の物は全部売っちまったんだが、宝重もついでにな」
「えー! なんて罰当たりな」
秘められた雁の宝重事情を聞かされて、陽子は驚きの声を上げる。六太は肩を竦めて同意した。
「だろー?」
「あれ? でも、どこかにあるんですよね……?」
陽子は再び首を傾げる。それに対する六太の回答は秀逸だった。
「雁の宝重はな、手放しても戻ってくるんだよ」
「――!」
陽子は大きく眼を瞠り、息を呑む。六太はにっこりと笑って念押しした。
「な、尚隆には言うなよ。悪巧みに使われたら、おれ、失道しちまうからな」
「うわぁ……」
延王尚隆の人の悪い笑みが容易に想像できて、景王陽子は頭を抱える。国主すら知らない重すぎる国家機密を軽く打ち明けた延麒六太は、何事もなかったかのように菓子を齧ったのだった。
2017.10.06.
後書き
2017/10/06(Fri) 00:48 No.198
「十二国で十二題」其の一「宝重」をお送りいたしました。
バカバカしいもので大変失礼をば。いつか書いてみたいネタでございました〜(笑)。
祭終盤、だんだん頭が壊れてまいりましたね〜。
次はもう少し真面なものを仕上げたい所存でございます。
皆さまの素敵な「十二国で十二題」作品をまだまだお待ち申し上げております。
2017.10.06. 速世未生 記
なるほどそういう(笑) 由都里さま
2017/10/06(Fri) 01:56 No.204
最初、「?」と思い、二回目を読み直して納得しました。
結局宝重がどんなものなのか分からず仕舞、というよりは…といったところですか(笑)
私も雁の宝重じゃんじゃん使いたいです。
ところで、陽子と六太くんのペアって、見た目の正反対の兄妹っぷりがイイですよね。今回も陽子さんの新人感と六太くんの年長ぶりが効いています。六太くんは陽子さんに話しながら、リアクションを楽しんでいると良いです。読ませて頂きありがとうございました!
爆笑爆笑大爆笑! ひめさま
2017/10/06(Fri) 21:04 No.211
未生さんのコメディ!!
5年も隠して、いや温めていらっしゃったのですね〜。
「お孵りなさい」って申し上げてもよろしゅうございましょうか?
ごめんなさい ひめさま
2017/10/06(Fri) 21:27 No.212
あ、ごめんなさい、5年前の昇華作品はこちらではなくて第5弾だったのですね。
失礼いたしました。
第6弾の感想としてはおかしなことになってしまいますがお許しください。
余計に見たい 饒筆さま
2017/10/06(Fri) 23:55 No.215
手放しても戻って来る……いったいどんな宝重なのでしょう?
飛んでくるのかな……トコトコ歩いて帰って来るのかな……
それともまた生える(笑)のかな?
余計に見たくなります!
六太クン、部外者になら見せてくれるかな〜(うずうず)
愉快なお話をありがとうございました!
笑笑! 文茶さま
2017/10/07(Sat) 02:01 No.224
なるほど〜! 私も雁の宝重欲しいです! これさえあれば......なんて(笑)
そして塙麟が肩に乗せていたあの鸚鵡が巧の宝重かも......
と考えるとまた興味深いですね〜。
主が必要なものを何処でも飛んで行って吐き出せるのかしら!?
どんな大きな物でも大丈夫!?など、色んな妄想が膨らんできますね(笑)
とっても楽しく読ませていただきました! ありがとうございます!
私も欲しい(笑) ネムさま
2017/10/08(Sun) 22:14 No.240
なるほど。これはうっかり言えません(笑)
でも案外尚隆も知っていて、今は雁が豊かになったから、
無理に使わないだけかも知れませんね。
却って陽子の方が「うちの宝重も戻ってこないかな」と考え込んだりして
(さすがに水禺刀は危なくて売れないでしょうけど)
雁の謎の宝重譚、楽しゅうございました!
あら? あららら? 篝さま
2017/10/10(Tue) 21:32 No.296
雁の宝重は常世の七不思議の一つですよね〜
(七不思議ってなんだよ、他のはなんだよって突込みは無しでお願いいたします←)
ほんと改めて考えると、「ついでに」宝重を売っぱらってしまう殿の豪気っぷりよ…。
ついでに売ってしまうような代物ですか…
ちょっと五百年前に遡って雁の官吏の皆様に胃薬差し入れたいです…。
愉快なお話ありがとうございました!
ご感想御礼 未生(管理人)
2017/10/10(Tue) 21:32 No.296
皆さま、バカバカしい小品に温かなご感想をありがとうございました〜。
由都里さん>
おっと解りにくかったようですね〜。失礼いたしました。
はい、宝重がどんなものなのかはこの際どうでもよいことでございます。
売っても戻ってくるところが肝要(笑)。
兄六太と妹陽子主上の会話をお楽しみくださりありがとうございました!
ひめさん>
ひめさんに笑っていただけて、ほっといたしました〜。
はい、5年温めていたのは「酒肴」でございますが、
こちらのネタもそれなりの年期が入っておりますよ!
もぉ、「お孵りなさい」とか、さすがはひめさん! 笑わせていただきました(笑)。
饒筆さん>
宝重に想いを馳せてくださりありがとうございます。
トコトコ歩いてくるのもかわゆいですが、また生えてくるって……!
さすがはお笑いの国の住人さんでございますね〜。
妄想を邁進させるご感想をありがとうございました!
文茶さん>
ね、何度も売ってしまったら、さすがに宰輔失道に陥るでしょうねぇ〜(笑)。
はい、改めて原作「月影」を読み直し、これって宝重なんだよね〜と思いました。
遠くに物を送ることができるって意外に便利かも。
ネムさん>
そうそう、意外にかの方はご存じかもしれませんね〜。
そして、陽子主上が売ることを考えたらっていうのも面白いですね!
謎の宝重をお楽しみくださりありがとうございました〜。
篝さん>
そうですよね、あんなに出てくるのに、宝重が出てこない雁、気になりますよね〜。
そんな妄想をバカバカしく形にしてしまいました(笑)。
「そんなものはなくてもどうにかなる!」
なんてお声が聞こえてまいりました。楽しいご感想をありがとうございました!