其の十一「建国記念式典」@管理人作品第7弾
2017/10/07(Sat) 00:06 No.217
皆さま、こんばんは〜。いつも祭にレス及び拍手をありがとうございます。
本日の北の国、最低気温は7.0℃、最高気温は19.5℃でございました。
この気温差が我が街の秋! これから木々が錦の衣を纏うことでございましょう。
さて、管理人はまたもバカバカしい小話を仕上げました。
慶が舞台ではございますが、漣の建国記念式典でございます。
笑いとばしていただけると嬉しゅうございます。
- 登場人物 鈴・陽子・祥瓊・桓魋・虎嘯・景麒
- 作品傾向 コメディ
- 文字数 1248文字
「十二国で十二題」其の十一(漣)
建国記念式典
2017/10/07(Sat) 00:10 No.218
見慣れぬ紋章の書簡が届き、金波宮は騒然とした。泰麒捜索で誼を結んだ漣極国より、建国記念式典の招待状が届いたのだ。各国の王と宰輔を招いての祝いの席とのこと、景王陽子の側近たちは色めきたった。無論その筆頭は麗しき女史祥瓊である。
「記念の式典に参列するのだから、正装しなければ!」
元公主である祥瓊の張り切りようは凄まじいものがあった。その勢いに押されつつも、陽子は遠慮がちに最後の文を読み上げる。
汚れても大丈夫な動きやすい服装でお越しください。
「ね、わざわざこう書いてあるんだよ。正装が汚れてしまっては大変だよ……」
「服装規定は遜って書くものよ! 私がついていながら陽子に変な格好はさせられないわ」
泰麒捜索の折といえば、祥瓊の頭に即浮かぶのは氾王であろう。雅な氾王に趣味が悪いと評されるのは、祥瓊にとって我慢ならないことに違いない。鈴はそっと陽子の肩を叩く。
「――この件に関しては、祥瓊に任せた方がいいんじゃないかしら」
紫紺の瞳を燃え上がらせて拳を握る祥瓊をおろおろと見つめていた陽子は、鈴の言葉にがっくりと肩を落としたのだった。
それからの金波宮は大わらわだった。女史主導で国主の漣国公式訪問に向けて綿密な準備が始まったのだ。衣装室や宝物庫から膨大な量の品物が集められ、女史によって検分されていく。儀式用、宴用、道中用など、揃えられる衣装は多岐に亘った。それらの着用を迫られて、簡素な衣服を好む慶主は情けない貌をする。
「――私には着付けが分からないよ」
「もちろん私も同行するわよ!」
女史は気迫漲る応えを返した。力持ちの左将軍桓魋が女史によって随行者に指名され、国主の威厳は形無しである。ほんとうはもっと人数が必要なのだ、と主張する女史を、慶主はどうにか宥め、宰輔と女史と左将軍を伴って出発したのだった。
「――えらい騒ぎだったな」
一行を見送った後、虎嘯がぼそりと呟いた。聞いて鈴は軽く吹き出す。国主景王の深い深い溜息が胸を過ったのだ。
「ああいうことで祥瓊に勝てる人はいないんだから、陽子も下手な抵抗をしない方がいいと思うわ」
「違いない」
久しぶりにしんと静まった宮の回廊を歩きながら、鈴と虎嘯はそう言って笑いあった。
それから日が経った。漣は遠いため、往復にはそれなりの日数がかかる。足の速い使令に慣れている国主は、騎獣に慣れない者を連れて行くのを嫌がった。さすがにそこを譲らない陽子に、祥瓊も折れた。それでもそれなりの日をかけて、一行は戻ってきた。
禁門から国主帰還の報を受けて、鈴は出迎えに急ぐ。肩を落とし、憂鬱そうに出かけていった慶主が心配だったのだ。だがしかし。
「ただいま!」
長旅にも拘らず、国主の声は溌剌としていた。それに引き替え、宰輔と女史はどんよりと視線を落とし、左将軍はひたすら苦笑を浮かべている。いったい何が起こったのだろう。鈴は小首を傾げる。答えを寄越したのはやはり機嫌のよい国主であった。
「楽しかったよ、芋掘り大会!」
途端に苦笑していた桓魋が吹き出し、景麒と祥瓊は更に肩を落としたのだった。
2017.10.06.
後書き
2017/10/07(Sat) 00:13 No.220
「十二国で十二題」其の十一「建国記念式典」をお届けいたしました。
バカバカしいものでごめんなさい〜。
けれど、ワンライ感覚で楽しく書き上げましたので、
笑いとばしていただけると嬉しゅうございます。
御題昇華、漸く半分でございます。さて、あと幾つ出せるでしょうか。
天帝のみぞ知る……(苦笑)。
皆さまの素敵な「十二国で十二題」作品をまだまだお待ち申し上げておりますね!
2017.10.07. 速世未生 記
ご感想御礼 未生(管理人)
2017/10/10(Tue) 21:59 No.301
皆さま、またもバカバカしい小話に温かなご感想をありがとうございました!
芋掘り大会を掘り下げると到底4千字では収まりませんでしたので
割愛させていただきましたが、皆さまのご感想が秀逸でございましたね〜。
由都里さん>
笑っていただけて嬉しゅうございます。
きっと、野良着も世卓氏にお借りして楽しく芋掘りに勤しんだことでございましょう(笑)。
ほんと祥瓊と景麒はお疲れさまですね!
文茶さん>
張り切っただけにお気の毒でございます、女史殿(笑)。
そうそう、あの方やこの方も参加されておりますよ〜。私も見とうございました(笑)。
お楽しみくださりありがとうございました。
饒筆さん>
もぉ、饒筆さんのご感想の方が何倍も可笑しくてお腹が捩れそうでございます……!
高級イケ野良着って……! 是非饒筆さんに芋掘り大会を書いていただきたいです(笑)。
ネムさん>
芋掘り職人を連れてくる饒筆さんの氾さまも素敵ですが、
自ら美しく芋を掘るネムさんの氾さまも魅力的でございますね!
焼芋に懐柔される祥瓊と景麒もツボでございました(笑)。
篝さん>
味を占める廉王……(笑)。
この先ももっと盛り上がる大会が開かれるかと思うと腹筋が壊れそうでございます!
本格的な作業着も競争の対象になりそうですね(笑)。
こちらこそ妄想が膨らむご感想をありがとうございました!