「帰山で十題」 「管理人作品」 「祝10周年帰山祭」

其の五「騶虞」@管理人作品第1弾

2015/09/01(Tue) 21:42 No.1
 祝! 10周年!
 本日の北の国、最低気温は17.9℃、最高気温は26.3℃でございました。 晩夏と言ってよい気温でございます。 祭中にどれだけ下がるか楽しみにいたしましょう(笑)。

 さて9月1日になりました。拙宅もとうとう10周年。皆さまのお蔭でございます。 ご来場ありがとうございます!
 そんなわけで、今年はこれまで2回頓挫させている「帰山祭」を 3度目の正直で開催いたします。 これから約1ヶ月、皆さまとともに楽しめるよう頑張ってまいりますね〜。

 投稿の見本を兼ねて管理人作品第1弾をお送りいたします。 よろしければご覧くださいませ。

「帰山で十題」其の五

騶 虞すうぐ

2015/09/01(Tue) 21:52 No.2
 それは美しい獣だった。虎に似ているが、虎ではない。白地に黒の縞模様の毛並みは、光線の加減により色味を変える。そして、黒真珠に星を散りばめたように輝く眼が印象的だった。性質は勇猛にして果敢。身の丈ほどもある長い尾と、一国を一日で駆ける速い脚を持つ。連れて歩くだけで衆目を集める、その名は騶虞。

 そんな稀な騎獣を引いた二人連れの旅人が街を闊歩していた。当の本人は気にしてはいないが、周囲がざわついている。
「さすがに騶虞二頭は目立つようだね」
 ざわめきに気づいた利広は、そう言って苦笑する。隣を歩く風漢は、大して気にも留めていないように生返事をしただけだった。
「そうか?」
「そうみたいだよ」
 応えを返した利広は、久方ぶりに顔を合わせた同胞を見やってまた苦笑した。

 互いに身を窶した気儘な風来坊、久々に鉢合わせたときには情報を交換する。稀な騎獣を持っていると、相応の舎館を選ばなければならない。そういう厩のよい舎館を探すのはそれなりの手間がかかるのだ。そして今回は、どちらも街に着いたばかりであった。そんなわけで、街を検分しつつ、利広は風漢と揃って舎館探しをしているのだ。

 漸く条件の合った舎館を見つけ、腰を落ち着けた二人は杯を交わした。
「騶虞はいい騎獣だけど、こういう時は困るよね」
「まあな」
 それでも、騶虞の良さは群を抜いている。最速の脚は言うに及ばず、呼べば迎えに来る賢さ、荒事に動じない勇猛さ。同意を求めても、風漢の反応は鈍い。利広は溜息をついた。
「今日はずいぶん口が重いよね。酒が足りないのかな」

「――俺は騶虞以外の騎獣を知らぬからな」

 軽く返されて、利広はしばし絶句した。昔、朱氏に聞いたことがある。騶虞を一頭捕えれば、二度と黄海に入らなくて済む、と。そのくらいに騶虞は高価な騎獣だ。騶虞をやったり取ったりできるような身分の人、と言われたことがあったが、上には上がいる。
「厩舎にいる騎獣の中で一番足が速いものを、と言ったら騶虞が出てきた」
 手酌で酒を飲みながら、風漢は飄々と言葉を継ぐ。利広は唇を歪めて揶揄した。
「――私だったら風漢に騶虞を渡したりしないね。足を与えたら最後だろう、風来坊」
「その言葉、そっくりそのまま返す」
 風漢は破顔する。そして、にやりと人の悪い笑みを見せた。
「蛇の道は蛇と言ってな、俺に騶虞を贈りたい奴もおるのだ」
 その努力が報われるとは限らぬがな、と続け、風漢は楽しげに笑った。利広は深々と溜息をつく。

 まったく、王なんて奴は碌なものじゃない。

 胸に秘めた言葉が聞こえるのか、風漢はいつまでも笑っていた。

2015.09.01.

後書き

2015/09/01(Tue) 22:01 No.3
 「帰山で十題」、まずは其の五「騶虞」をお届けいたしました。 実は今年の桜祭の第1弾は当日140字しか書いていなくて涙目で仕上げた、 なんてメモが残っておりました。 今回はもっと酷く、115字しかなくて、ほんと涙目でございました。
 騶虞の描写を調べるために原作を漁っていたら、 ついついじっくり読んでしまうのですよ! 原作万歳!(開き直り)

 そんなダメ管理人がお送りするマニアックな小さいお祭でございます。 皆さまの素敵な作品を心よりお待ちしております。

2015.09.01. 速世未生 記

10周年 おめでとうございます! ネムさま

2015/09/01(Tue) 23:44 No.4
 サイト開設10年とのこと、心よりお祝い申し上げます。
 10年と言えば一山、しかも帰山祭ということで、某風来坊達が酒を酌み交わしながら、 いろいろ評価している風景が浮かびます。 でも毎回いろいろ企画を立て、十二国ファンを巻き込んでくれる未生様には、 陽子のように「勢いを感じる」と賛辞を惜しまないでしょう。 これからも益々のご活躍をお祈りいたしております。

 それにしても、常世で最も優れた騎獣を「これしか知らない」と、 しれっと言い抜かすとは「この若様が〜!」と言いたくなりますね。 しかも“あの”利広を呆れさせるところが、さすが。この二人は会う度に、 自分を棚に上げ、お互いのことを呆れているのでしょうね(笑)
 二人の軽妙な会話と“いい性格”を楽しませて頂きました。

 (私もついつい原作を読み耽りがちですが、期間中には何か祝い品を持参できるよう、 頑張ります ^^;)

10周年おめでとうございますー!! 饒筆さま

2015/09/02(Wed) 00:24 No.5
 十周年おめでとうございます&帰山祭の開催ありがとうございます〜!  凄い! 「ひと山」お超えになられたのですね!  これからも(ご無理なさらない範囲で)ますますのご活躍を楽しみにいたしております。

 さて、スウ虞を連れたお二人さん…… いやいや、目立つのはスウ虞だけじゃないと思いますよ。 二度見、三度見の女人たちがきゃあきゃあ申しておりませんでしたか?(笑)
 左右のギャラリーに向かってにこやかにお手振りする利広さん (さすがロイヤルファミリー)と、 特に気にせずスタスタ歩くくせに突如道を聞いたり美味い店を紹介してくれと 声をかけだす風漢氏(始終マイペース)が見えました(あはは)
 帰山コンビは楽しいですね♪
 私もお祭りに花を添えられるよう頑張って妄想してみますー

ありがとうございます! 未生(管理人)

2015/09/02(Wed) 11:52 No.6
 本日の最低気温は19.1℃。北の国の住人にとっては寝苦しい温度でございました。 予想最高気温は22℃。久々の雨模様でございます。 一雨毎にひたひたと秋が近づいてまいります。

 早速祭に拍手をありがとうございました〜。

ネムさん>
 10周年を素晴らしいお言葉で寿いでくださりありがとうございます!  帰山のお二方は管理人のイチオシとニオシの方々。 そんな御仁にお褒めいただけるとは天にも昇る嬉しさでございます〜。
 歳のせいか(いや、30ですが/笑)すぐに息切れしてしまいますが、 細々と続けてこられたのは、ネムさんをはじめ支えてくださる皆さまのお蔭でございます。 有難き幸せ。
 拙作にご感想をありがとうございます。 かの方のふざけた科白で太子が絶句してしまい、どうにもこうにも話が進まず、 涙目でございました。何とか初日に出すことができてほっとしております。 お楽しみくださりありがとうございました!
 ネムさんのご投稿もお待ち申し上げておりますね〜。

饒筆さん>
 10周年と祭開催に寿ぎをありがとうございます!  はい、もともと2ヶ月で止める予定がひと山越えてしまいました(笑)。 のんびりやってまいりますので、よろしくお願いいたしますね〜。
 いつもながら妄想を誘うご感想をありがとうございます!  瞼の裏に光景がありありと見えて吹き出しました(笑)。
 饒筆さんの作品、お待ち申し上げておりますよ!
背景画像「吹く風と草花と-PIPOの部屋」さま
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