其の七「次男三男」@管理人作品第9弾
2015/10/14(Wed) 01:17 No.120
皆さま、いつも祭にご投稿・レス及び拍手をありがとうございます。
レスは明日させていただきますね〜。
本日の北の国(まだ床に就いておりませんので)、最低気温3℃は20時でございました。
最高気温は14℃。夕方にはぐっと気温が下がり、近郊の峠は吹雪、
近くの山は初冠雪でございます。
さすがに耐え切れずストーブを点けてしまいました(苦笑)。
明日の朝起きたら真っ白でないことを祈っております。
さて管理人、桜祭と同様一日一作状態でございます(苦笑)。
かなり遅刻してしまいましたが、本日の一作をどうぞ。
- 登場人物 尚隆・利広
- 作品傾向 ほのぼの?
- 文字数 1012文字
「帰山で十題」其の七
次男三男
2015/10/14(Wed) 01:20 No.121
久方振りに顔を合わせた南国の風来坊は、いつもの如く柔和な笑顔で片手を挙げてみせる。尚隆は唇の端を上げてそれに応え、肩を並べて漫ろ歩いた。腰を落ち着けた酒場で杯を交わしつつ、二人は此度も四方山話を始める。
「お前も相変わらずうろついておるのだな。大丈夫なのか」
尚隆は揶揄めいた問いかけをした。手酌で酒を飲む利広は、何が、と問い返しはしない。
「出来のいい兄と妹がいるからね」
私がいなくても大丈夫だよ、と続け、大国の第二太子はにっこりと笑む。奏国王家の英明な第一太子と明敏な公主を思い浮かべ、尚隆も唇を緩めた。しかし、謙遜してはいるが、この次男坊も一を聞いただけで多くを知る聡明さを持つ。
「風漢こそ。ほっつき歩いている場合じゃないよね」
代わりがいる己とは立場が違う、と言いたげな利広の流し目を、尚隆は笑みを以て軽く受け流す。じっとしているのは性に合わないのだ。国は既に王が居ずとも回るようになっている。多少のことならば、官吏が各自で判断して執り行っているだろう。王の裁可が必要な案件は、今やかなり少なくなっているのだから。
蓬莱にいたときも、尚隆は大人しく屋形にいる若君ではなかった。気楽な三男坊ゆえ、城下に降りれば誰かがお守をしてくれる。二人の兄が亡くなり、世継ぎと呼ばれる身分になってからも、それが変わることは終ぞなかった。
己で見なければ分からぬこともある。民の噂話も侮れないものだ。戦乱の世、肌に感じる空気は、ある日いきなり変わりもする。城に閉じこもってばかりいては、片鱗に気づくことすらできない。それは、あちらもこちらも同じことだろう。
こちらでは、己の国が落ち着いても、周辺の国の王が斃れれば、難を逃れるために荒民がどっと押し寄せる。王は自国だけを見てはいられないのだ。宮の中を見回り、城下に降り、首都州を歩き、他州に足を伸ばし、先進の他国を巡り、その末に軋みかけた国を検分するようになった。
「俺が出るのが一番早いのだ」
言って尚隆は人の悪い笑みを浮かべる。無論本音だが、それだけではない。息抜きや楽しみでもある。
「――その科白、留守居の連中が聞いたら、かなり怒るだろうね」
軽口を聞いて、利広は呆れたように嘆息する。尚隆は笑いを禁じ得なかった。
「その科白、そっくり返す」
お前の兄が聞いたらきっと怒るだろうよ、と続けると、途端に利広は嫌な貌をした。
「――風漢は絶対に長男じゃないよね」
不貞腐れた利広の指摘に、尚隆は笑って頷いた。
2015.10.14.
後書き
2015/10/14(Wed) 01:23 No.122
「帰山で十題」其の七「次男三男」をお届けいたしました。
つくしさんと饒筆さんが素敵なお話を投稿してくださったために、
なかなか取りかかれなかった一品でございます(苦笑)。
軽めの小品をお楽しみいただければ幸いでございます。
さあ、あと2日! 皆さまの素敵な帰山をまだまだお待ち申し上げておりますよ〜。
おやすみなさいませ。
2015.10.14. 速世未生 記
ご感想御礼 未生(管理人)
2015/10/16(Fri) 22:48 No.149
饒筆さん>
笑っていただけて嬉しゅうございます〜。
なんだかんだ言って利広は利達兄さんには頭が上がらないのだと思います。
だから見つからないようにこっそり抜け出す(笑)。
うちの絵描きは写真屋を崇め奉っておりましたよ。
小さい頃、あんまり写真屋が絵描きに泣かされるので
「こいつにはやられたらやり返せ」と教えたら薬が効きすぎました(苦笑)。
最近は大分対等に近くなってまいりましたが、やはり上は強い!
ご感想をありがとうございました〜。