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御題其の十三

(末声注意!)

伝えられない言葉


「──何故、彼女を置いて逝けるの?」
陽子あれ──連れて逝ってもよいのか?」

 にやりと笑う尚隆に、利広は溜息をつく。利広は尚隆を真っ直ぐに見つめる。
「そうじゃなくて……」
「俺が滅王にならずに済んだのは、あれのお蔭だ。感謝するのだな」
 尚も言い募る利広を、尚隆は呵呵と笑って遮る。そんな尚隆を利広は暗い目で見つめた。

「──そうじゃない。一緒に残る道は、ないの?」
「ないな」

 揺るぎなく即答して、尚隆は屈託なく笑う。利広は躊躇いがちに問うた。

「彼女は……知っているの?」
陽子あれ──己が独りにならない術を知っている。──お前と同様にな、利広」

 尚隆は微妙にずれた応えを返し、じっと利広を見つめる。利広はそれを承知で深い溜息をついた。
「それ……彼女に言ってあげたの?」
「俺が言う必要もなかろう?」
「──ずるいね、相変わらず……」

 利広は言い捨てて踵を返す。──最早話すことはない。尚隆はその後ろ姿に、ゆったりと声をかける。

「ではまたな、利広」

 利広はぴたりと足を止めた。が、振り返らずにそのまま去った。尚隆は薄く笑い、その背を見送った。

2006.05.02.
 舌の根も乾かぬうちに、また書いておりますが……。 ド・ツ・ボ、です。 恐らく他では書かないものを御題にしていると思われます。
 連休中、旅行に出たら、PC開けられないことに今頃気づくな……!  気づいてしまったからには妄想が湧いてくるのでございます……。 哀れなり、と笑ってくださいませ。

 今年の祭にてようやく本編を書くことができました。 よろしければ末声別館「夢幻夜想」にて短編「伝言」をご覧くださいませ。(2008.07.18.追記)

2006.04.29.  速世未生 記
(御題其の十三)
背景画像「幻想素材館 Dream Fantasy」さま
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