御題其の十五
(末声注意!)
桜が齎す夢
「──主上」
満開の桜の花びらが降りしきる。その薄紅の花吹雪の中に、鮮やかな紅の女王が佇んでいた。振り返る主は花がほころぶように微笑む。その、あまりに晴れやかな笑顔に、浩瀚は胸打たれ、思わず目を逸らした。
かつて主はその鮮やかな微笑を、伴侶であるかの方に向けていた。かの方が登遐してから、主の鮮麗な笑みは、どこか翳りを秘めていた。その、愁いが払拭された、清麗な笑み。
嫌な予感がした。次第に心臓が早鐘を打つ。その朱唇から零される言葉を聞きたくない。恭しく拱手した浩瀚は、目を瞑り、耳を塞ぎたい気持ちを堪えた。
「浩瀚、長い間私を支えてくれて、ありがとう。これからも、この国を頼む。──私がいなくなっても」
「主上……」
やはり──。
かつて、かの方が逝ってしまったとき、浩瀚は予感した。いつか桜がこの方をも連れ去ってしまうのだろう、と。その切ない予感が、今、現実となる──。
浩瀚は二の句が継げなかった。頭を上げることもできなかった。薄紅の花びらは春風に散らされ、いつまでも降りしきっていた。
2006.05.12.
「追憶」の一場面です。
「夢幻夜想」を作ってるときに、うっかり読み返してしまったのは失敗でした……。
──もう、どうにかしてください……。また末声モード復活です。
桜が散るまで、仕方ないと諦めます。「桜が齎す夢」
──痛いな。
(続きはもっと痛い……。耐えられるだろうか)
ごめんなさい! 末声だというのに、本文が見えてましたね。
大変失礼いたしました! 修正入れましたので……。これから気をつけます。(2006.05.13.追記)
この続きは末声別館
「夢幻夜想」の短編「桜夢」になります。
よろしければご覧くださいませ。別窓開きます。(2008.07.18.追記)
2006.05.12. 速世未生 記
(御題其の十五)
はなさま
2006/05/13 23:33
はじめまして。いつも楽しみに読ませていただいています。
末声にはまって苦悩されているご様子ですが、お書きになられるお話は切なさはあっても
ある種の救いがあるので、私は読んでいて苦になりませんし、むしろより多くのお話が読めて
嬉しく思います。
でもやはり甘いお話が好きなので、もしよければ睦言のように甘いお話をお待ちしています。
いつもがんばっている陽子さんに尚隆との新婚旅行をプレゼントしてあげて下さい。
…尚隆のほうが喜ぶような気がしないでもありませんが(笑)それではまた
未生(管理人)
2006/05/14 04:35
はなさん、いらっしゃいませ〜。こちらこそ、はじめまして!
激励のお言葉、ありがとうございます!
もう、開き直って「末声」書き散らしています。(表に出せるものは少ないでしょうが……)
書いているうちに少しずつ気持ちが治まってきまして、だんだん他のも書けるようになって
まいりました〜。
「新婚旅行」! よいですね〜! 次に甘いものを書くときに考えてみます。
メッセージ、ありがとうございました!