「目次」
「玄関」
御題其の十六
守りたいもの
臥牀に横たわる桂桂は、陽子の姿を認めると笑顔を見せた。起き上がろうとする桂桂を軽く制し、陽子は声をかける。
「──桂桂、済まなかった」
「陽子?」
桂桂は不思議そうに首を傾げる。そのあどけない様に、陽子は罪悪感を拭えなかった。
「蘭玉を……助けることができなかった……」
「陽子のせいじゃない」
桂桂は即座にそう答え、静かに陽子を見つめた。そして、ふわりと笑みを見せる。
「陽子がいなかったら、僕もお姉ちゃんも、あのとき妖魔にやられていたんだよ」
「桂桂……」
小さな桂桂の優しさが身に染みる。陽子は、蘭玉の代わりに桂桂を守っていこう、と心に誓った。
2006.05.19.
「黎明」に詰まるとシリーズ、金波宮の小品です……。 桂桂、またどこかで書けるといいなぁ。
2006.05.19. 速世未生 記
(御題其の十六)
背景画像「幻想素材館 Dream Fantasy」さま
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