御題其の二十六
女史の深い溜息
「──陽子、お行儀悪いわよ」
「へ?」
榻で胡坐を掻き、お茶菓子をぱくつく陽子に、祥瓊は溜息をついた。陽子はお茶菓子を口にくわえながら首を傾げる。祥瓊はげんなりと肩を落とす。
いくら着ているものが袍だといっても、胡坐はないだろう。これが、慶東国国主景王の実態、なのだ。
紅の光を纏う、鮮烈な女王──。
そう称えられる景王陽子のこの姿を見たら、何人の男が卒倒することか。
かの方はこの姿をご存じなのだろうか?
──祥瓊は不安になる。陽子の伴侶、稀代の名君と名高い延王尚隆は、どう思うだろう? 祥瓊は恐る恐る陽子に訊ねる。
「まさか……と思うけど……あの方の前でそんな恰好、していないわよね?」
「うん。でも、あのひとは、きっと、『お前は面白い女だ』と言って笑うだけじゃないかな?」
「──あの方の前でも、そんな感じなの……?」
信じられない──祥瓊は激しく首を振る。この子は、ほんとうに、いつもこう。伴侶がいるとは思えない、この色気のなさ。
再び、げんなりと肩を落とす祥瓊。麗しくも漢前の女王は小首を傾げ、不思議そうに眺めるのみだった。
2006.06.28.
最近、祥瓊を書いていないな〜と思い、大分前に書いたものを引っ張り出してみました。
──実は、「黎明」後、楽俊に会いに行く祥瓊のお話なんかも書いているのですが
短編になりそうな長さです。
(短編「再会」として仕上げました。2008.08.18.追記)
2006.06.28. 速世未生 記
(御題其の二十六)
けろこさま
2006/06/28 19:35
未生さま、こんばんは。
躾の厳しい家庭育ちなのに、常世に馴染むにつれて陽子主上は、地がボロボロと出るようですね〜。
祥瓊の心配ももっともだけど、尚隆の前なら陽子も無意識に立ち居振る舞いに「乙女」が入るだろうし、
尚隆の目にも「乙女フィルター」がかかるから、大丈夫!(笑) のハズ…
漢前陽子の色気に騙されない祥瓊の苦労はこうして続くのであった… 頑張れ祥瓊!
未生(管理人)
2006/06/29 04:26
けろこさん、いらっしゃいませ〜。
躾の厳しい家庭だったからこそ、解放感に満ち溢れているのではないか……という、
私の勝手な妄想であります、はい。
さすがに尚隆の前ではしないのでは……。「乙女フィルター」いいですね!
思わず笑ってしまいました。
このお話も実はもう少し続くのです。いつか書ければいいなぁ〜。
メッセージ、ありがとうございました!
続編も仕上げております。短編
「憧憬」、よろしければお楽しみくださいませ。別窓開きます。(2008.08.18.追記)