御題其の三十三
(微妙に18歳未満お断り)
見守る瞳
「……ん」
微かな呻き声と身動ぎで、目が覚めた。腕の中の伴侶を見やると、その閉じた眼から、涙が一筋、流れた。
起きているときには、もう見せることがなくなった、女王の涙。尚隆は伴侶の美しい顔を、しばし眺めた。
──夢を、見ているのだろうか?
足許に潜む暗闇が見せる悪夢は、ときに伴侶を苦しめる。叫び声とともに目覚める伴侶を抱きとめ、宥めることは一度や二度ではなかった。
声なく涙を零す、眠れる伴侶を、起こそうか、止めようか。尚隆は麗しいその顔を見つめながら思案する。うなされているわけではない。だが──。
陽子……夢はお前に何を告げている──?
尚隆の声なき問いに応えるかのように、伴侶は目を開けた。潤んだ瞳を見つめ返し、微笑を送る。美しいな、と胸で呟きながら。
瞬きとともに零れ落ちる、大粒の涙。己の唇でその涙を拭い、そっと口づけを落とす。
お前が悪夢から目覚めるときには、いつも傍にいたい。
そんな、密かな願いを、唇に籠めて──。
2006.08.02.
「黄昏」第4回に詰まって書き流した「夢現 第四夜 登祚」の尚隆視点でございます。
──また、一気書きできなかった代物。
「御題」は、
勢いが命! と思っているのに、最近ダメダメです……。
しかも、微妙に「18禁」……
(基準は、私が恥ずかしいかどうか、かも)。
「登祚」と拍手と御題を仕上げたら、憑き物が落ちたように「黄昏」第4回が仕上がりました。
これから推敲・校正し、予断を許さない第5回に向かおうと目論んでおります。
2006.08.02. 速世未生 記
(御題其の三十三)
けろこさま
2006/08/02 23:25
悪夢を見て涙している陽子を眺めて、「美しいな」と思える尚隆が…
陽子の涙は尚隆しか見れないし、このころにはその尚隆でも見れなくなっているし、
尚隆は涙を流している陽子が一番好きそうだし、悪夢でも麗しい涙顔を見れてうれしかろう、
とヨコシマなこと考えてしまいましたよ〜。
…悪夢はきっと尚隆と一緒の時にしか見ないことでしょう…
未生(管理人)
2006/08/03 05:42
けろこさん、いらっしゃいませ〜。
ああ、そういう見方もできますね! なるほど。
久しぶりに涙を見て、また胸を打たれてしまったと思ってくださいませ(笑)
うなされてもいないし、ね。
「桃缶」で尚隆を観察する陽子を書いた反動かもしれません〜。
悪夢は尚隆と一緒のときにしか見ない、と私も思います。
すると、尚隆は「悪夢発生器」!? し、失礼をば。
いかんな〜、甘いシリアスを書いたつもりだったのに、自分でギャグにしてる。
これも「テレ」だと思って、笑って許してくださいませ!
メッセージ、ありがとうございまいた!