御題其の三十五
暑いのは何故?
「──暑い」
陽子はぼそりと呟く。その呟きに答える者は、ない。
「暑いんだけど」
苛々と陽子は声を荒げる。それでも誰も答えない。
「暑いんだったら!」
「──主上、修行が足りませんよ」
陽子の怒声に答えたのは、涼しげ──というよりは、凍りつくように冷たい声だった。陽子はむかっ腹を立ててその声に食ってかかった。
「──祥瓊。そんなこと言ったって、暑いものは暑いんだよ!」
「普段、お召しになられているものが略装すぎるのですよ、主上」
宴に相応しく、華やかな襦裙を纏った女史祥瓊は、汗ひとつかかずにそう諫める。豪奢な大袞を着せられた景王陽子は恨めしげに祥瓊を見つめる。
「そんなお顔なされても、誰も同情いたしません。大袞でお出迎えなさる、とあの方にお約束なさったのは、他でもない主上ご自身なのですから」
祥瓊は言葉遣いも麗しく、氷の微笑を浮かべる。陽子は、かつての自分の失言を、心から呪ったのだった。
2006.08.16.
「慶賀」の前に大袞を着付けられた陽子主上と監督している女史祥瓊、
というところでしょうか。
ああ、やはり暑いです。今日も予想最高気温は30℃。
お盆ももう終わるというのに……。でも、涼しくなると淋しい
のだろうなぁ。暑さを惜しんで、久しぶりに一気書きしました。
御題らしい御題になったのではないでしょうか(自画自賛)。
2006.08.16. 速世未生 記
(御題其の三十五)
けろこさま
2006/08/16 23:28
未生さま、こんばんは。
ただでさえ着慣れない正装を暑い最中に切るのは拷問に等しいですよね〜。
私だってこの時期にスーツも和装もしたくないです。
で・も・ね、「暑い!」と怒鳴ることの出来る陽子はまだましですよ〜〜。
コッチはキャミ一枚でも耐えられず、脳内は沸騰中で妄想すら出来ず思考は断片のみ、足の先から溶け始めて歩みは鈍くフラフラとしながら平地でこけそうになる始末。
ああでも今日は台風のおかげで涼しい風が吹いているので少し楽です〜〜〜。
景麒でも浩瀚でもなく祥瓊が、正装姿で汗一つかかずに横に立っていて氷の微笑を湛えていたら… それだけで背筋が凍るほどの涼しさを覚えます…
あ、だから陽子は怒鳴れるくらいの暑さしか感じてないのだわ〜…
ひめさま
2006/08/16 23:30
こんばんは。
陽子と祥瓊のやり取り、情景が目に浮かぶようです。
何しろお気に入りの“慶賀”の前ですからね。
ところで、今更ながら気がついたのですが、「のろう」と「いわう」って紙一重の差なんですね。
未生(管理人)
2006/08/17 05:21
けろこさん>
キャミ1枚でも溶けそうとは……恐るべき暑さですね!
30℃で暑いといってごめんなさい〜。
でもでも、「時折小雨の30℃」って、北の国ではありえないのですっ!(泣)
座っているだけでカビが生えそう……。
陽子主上、祥瓊の氷の微笑で少〜し涼やかなハズ! でございます(笑)
ひめさん>
情景が目に浮かびますか? ありがとうございます〜。
そうそう、「呪う」と「祝う」って微妙に似てますよね。
少年誌のギャグ漫画でよく見かけますよ〜。
メッセージ、ありがとうございました!