御題其の四十一
贈物のおまけ
「お帰りなさい、陽子」
「ただいま。長らく留守にして悪かったね」
「ううん。あら──」
雁から帰国した陽子の左手に輝く指輪を、出迎えた祥瓊は目ざとく見つけた。不思議そうに祥瓊の視線を追った陽子は、恥ずかしそうに頬を染めた。
「素敵な指輪ね。装飾品を嫌う陽子が、珍しいわね」
「ほんと。あ、あの方からの贈り物なのね」
悪戯っぽく訊ねる鈴に、陽子は小さく頷いた。祥瓊は陽子の左手を手にとって、しげしげと指輪を眺めた。
「──これは範の細工ね。白金かしら。意匠も繊細で素敵。もう少しよく見せてもらっていい?」
「うん、いいよ」
やはり元公主の祥瓊は目利きだな、と感心しつつ、陽子は指輪を外して祥瓊の手に乗せた。祥瓊は感嘆しながらじっくりと指輪を眺めた。その内側までも。そして──。
「あら? 凄い、指輪の内側にまで、模様が刻んである……」
「あ、ほんとう。綺麗ね。陽子、気づいてた?」
「え? ──知らなかった」
祥瓊の歓声に、鈴も手にとって確かめる。二人に促され、その「模様」を見た陽子は、目を見開き、それから、にっこりと微笑んだ。その女らしさの滲む艶麗な笑みに、祥瓊も鈴も思わず見とれてしまった。
N to Y
指輪の内側には、そう刻まれていた。注文を受けた範の職人は首を傾げたかもしれない。延王尚隆一流の悪戯にも似たおまけ。陽子はまた心温まるものを感じ、遠く離れた伴侶を愛おしく想った。
2006.09.26.
短編「贈物」を書きながら、こんな「オマケ」があってもおかしくはない!
と思っておりました。そして、ついつい書き流してしまった小品でございます。
ああ、久しぶりに一気書きしました!(嬉)
陽子がいつ気づくか、とほくそえむ尚隆を想像すると、とっても面白いです。
2006.09.26. 速世未生 記
(御題其の四十一)
けろこさま
2006/09/26 22:09
こんばんは。
おおぅ!なんてカ・ワ・イ・イvおまけ話でしょう。
絶対尚隆は何時気づくかと楽しみにしてますよ。
でも、陽子のことだから彼女達に見せてと言われなかったら、
余程の事がない限り指輪を外さないだろうから、
その後の尚隆が―まだ気づかないのか―と憮然とするのもありだったかも〜。
ま、二人の友人が見せろと迫るのも計算済みでしょうけどね、彼の君なら。
陽子の艶麗な笑みに見とれた二人。
御題10「女王の想い人」のころには思いもしなかった女らしい姿に、
陽子もやっぱり女だったのねぇ と感涙とともに囁き合ってたりして…
未生(管理人)
2006/09/27 05:35
けろこさん、いらっしゃいませ〜。
カワイイと言っていただけて嬉しいです〜。
うんうん、かの方は、いくら陽子が鈍くても、祥瓊が気づくだろう、と思っておりますよ。
そんな妄想も、また楽しからずや、でございます。
そして、女らしい陽子に見とれた二人は、次の日にまたガサツな姿に戻る女王の頭を
ガツ〜〜ンと……。あれ?
し、失礼いたしました〜〜。
けろこさま
2006/09/28 00:31
こんばんは〜。
あっはっはっは〜っ。そうですよね〜。
翌日の漢前な主上の姿に「あれは幻だったのね〜」と盛大な溜息を吐きながら、
二人は女王をしかりとばすのですわv
しかも落胆分さらに厳し〜く。
そして陽子は「いつもよりヒドイんじゃないか?何故だ?」と反省の色もなし。
それが更に二人をヒートアップさせて…
女王は自分の魅力に無頓着だからねぇ。
未生(管理人)
2006/09/28 05:29
そうそう、そして妄想は果てしなく続くのです!
──だって「黄昏」第12回に詰まっているのですもの……
メッセージ、ありがとうございました!