御題其の四十三

小さな幸せ

「陽子」
　遠くから祥瓊が主を呼んでいる。主はにこやかに振り返った。王の名を当たり前のように呼ぶ主の友人。己にはできないことだ、と浩瀚は小さく息をつく。
　王のいない蓬莱からやってきた主は、見事なくらいに身分という垣根を飛び越える。その大らかさは、国と民を温かく包みこむ。

　王を呼び捨てにするなど──。

　そう思いつつも、浩瀚は、愛しい人の名を、心でそっと呼ぶことがある。

（陽子）

「──何か、浩瀚」

　執務中の主は、顔をも上げずに応えを返した。浩瀚は目を見張る。聞こえたはずはない。心の中で呼んだだけなのだから。

「どうした？　今、私を呼んだだろう？」
「え、いいえ……」
「そうか？　──呼ばれたような気がしたんだけどな」
　小首を傾げる主に微笑を送る。主はいつも、浩瀚に心をかけてくれているのだ。信頼置ける臣として。

　──それでいい。それで充分だ。

「また笑う……。ひとりで分かったような顔をして、お前はずるいぞ」
「そんなことはございませんよ、主上」
　憮然とする主に浩瀚は再び笑みを返す。
「主上は慶を照らす輝ける太陽でございます。その、御名と同様に」
「──お前は、相変わらず、口が巧いな」
　僅かに目を見張った主は、にやりと不敵な笑みを見せた。浩瀚は黙して微笑し、恭しく拱手を返した。

2006.10.14.

　「黄昏」第14回を仕上げたら、俄然違うものを書きたくなりました〜。 久しぶりの浩瀚、一気書きでございます。
　最近浩瀚がないですね、と呟き、風邪を労ってくださったＨさま、 こんなものでもよろしいでしょうか？

2006.10.14.　　速世未生　記

けろこさま

　こんばんは。
　えーっと、久々の浩瀚話ですが、良いですか…？
　念波？　以心伝心？　 「小さな幸せ」だなんて題ですが、コレだけ読んだら、おもいっきり、モロ、 浩瀚×陽子 （フォント大強調のつもり ←はい、フォント大強調にしてみました／笑　 2008.10.22.管理人追記） なんですけどー、けどー。
　ただ呼ばれたような気がした、のではなく、「陽子」と呼ばれたような気がした、 とおっしゃている様に聞こえますのよ〜。 そして名を呼ばれたと感じたってことは、信頼の置ける臣下として気にしていると言うより、 陽子も浩瀚に想いを寄せているから、と受け取れちゃうのです〜。
　なんだか「とっても幸せ」て感じですよ〜。

ひめさま

　こんばんは〜。 けろこさんに先を越されてしまいました（笑）。
　やはり「思念」てあるのでしょうね。 報われているな、という思いを隠す浩瀚、本心を口にすることで陽子の注意を逸らす・・・
　う〜〜ん、嬉しいよね、浩瀚！！　「とっても幸せ」！！！

未生（管理人）

　ありゃ、「小さな幸せ」ではなく、「とっても幸せ」でしたか〜。 いや、裏で黒いものを書いているので、これだと「小さい」よな〜と思ってました(笑)。

けろこさん＞
　「浩陽」を書いたつもりはなかったのですが……（笑） 　普段名前を呼ばない者に「陽子」と呼ばれた自覚があれば、陽子主上、 「不敵な笑み」は見せないと言い訳しておきましょう。（さすがに照れると思われる……）

ひめさん＞
　先を越されましたね(笑)。
＞本心を口にすることで陽子の注意を逸らす・・・
　ふふ(笑)！　「ずるい」のはそこだけど、陽子主上は解ってませんね。 解ってしまったらまたタイヘンなのでしょうが。

　「小さな幸せ、とっても幸せ！」ということでした。 メッセージ、ありがとうございました〜！

けろこさま

　こんばんは。

　ひめさん、もうこの御題を読んだ瞬間に書かずにはいられなかったのですよ〜。 で、ひめさんの登場を待てずに先レスしちゃいましたのよA^▽^;

　未生さま、ええ、だから「浩陽」に思えるのですよ〜。 名前を呼ばれてうれしくって…てな感じで。

　どちらにしても浩瀚は「とっても幸せ」なのは間違いなしですわｖ

未生（管理人）

　けろこさん、いらっしゃいませ〜。 思わず書いてしまったのですね〜。けろこさんの衝動を引き起こせて嬉しいですvvv　
　ええ、浩瀚は「とっても幸せ」。ちょっと哀れな気もいたしますけれど……。
　メッセージ、ありがとうございました。

ひめさま

　こんにちは〜。
　けろこさん、ワタクシ思うのですが、 「これしきのことで浮かれてはいけない」。 それが証拠にあの方が出てこられないではないですか。 こんなもの（すみませ〜〜ん）でつられてなんかいては・・・・
　ワタクシたちはまだまだア・オ・イ！！

けろこさま

　こんばんは〜。
　ああ、そ･そうですね！　 黒い方も出てこられていないというのに、こんなので釣られてなんて、釣られ…
　ああんっ！釣られちゃいましたワｖ　 ホント、ワタクシたちまだまだですワ〜(笑)

未生（管理人）

　……(笑)
　どんどん釣られてくださらないと釣り人（？）の立場がないじゃないですか(笑)。 お二方とも釣られてくださってありがとうございました！