御題其の四十五
氾麟の疑問
氾麟は景麒に訊いてみたいことがあった。だから、景麒が主と景王の後を追って出て行こうとしたとき、その服をぎゅっと握りしめ、それを阻止したのだ。景麒はそんな氾麟の実力行使に、困惑したように口を開いた。氾麟はにっこりと微笑む。
「──氾台輔、そろそろ離していただけませんか?」
「景麒までいなくなってしまったら、退屈だわ。もう少しここにいてくださらない?」
「はあ……」
景麒は曖昧に頷いた。氾麟はにこにこと笑みを浮かべ、早速己の疑問を訊ねる。
「ねえ、景麒、さっき蠱蛻衫を羽織ったあたしが誰に見えたの?」
「え──」
「なんだか随分驚いていたみたいだけれど」
氾麟は可愛らしく小首を傾げ、景麒を観察する。無表情な景麒が、蒼ざめて冷や汗を流し、そのまま固まってしまった。これ以上問うても、答えは返ってこないだろう。氾麟はそう判断し、にこやかに微笑み、話題を変えた。景麒はほっとしたように、その他愛ない話に応じたのだった。
しばらくして主と景王が堂室に戻ってきた。景麒は拱手して二人の王を迎える。氾麟はその隙に、もう一度蠱蛻衫を羽織ってみた。振り返った景麒の驚愕はまったく見ものだった。呆気に取られたように氾麟を凝視し、狼狽えて己の主を振り返る。
「──よく分かったわ、景麒」
氾麟は顔をほころばせた。能面のような景麒の顔が、ほんのりと朱に染まる。
「嬌娘。初対面の者をそのように苛めるなど、失礼ではないかえ」
「まあ、主上。苛めてなんかいませんわ。あたしは疑問を解決したかっただけですもの」
主は口許を扇で隠し、はんなりと氾麟を諭した。氾麟は鋭い主に屈託ない笑みを返す。景麒はますます赤くなり、麗しき景女王だけが首をしきりに捻っていた。
2006.10.24.
ああ、またバカバカしいものを書き流してしまった……。
しかも、ここに一度書いたものをオールクリアしてしまい、もう一度書き流した代物でございます。
こんなん出していいのだろうか。
お目汚し、失礼いたしました〜。
2006.10.24. 速世未生 記
(御題其の四十五)
ひめさま
2006/10/25 00:10
今晩は〜。
「ワタクシの疑問」も解決していただいて(小悪魔)氾麟に感謝!です。
そして、「素直な景麒」にも乾杯!です。
原作を読んでいたときには、まだ「二次」の存在を知らなかったので、確信できない歯がゆさ、
みたいなものがあったのです。
一つの考え方として、「なるほど」と納得してしまわざるを得ない成り行きです。
もっともっと頭に花を咲かせましょ!!
未生(管理人)
2006/10/25 05:42
ひめさん、いらっしゃいませ〜。
毎日「黄昏の岸〜」とにらめっこしておりますが、「景麒の服を握ってひらひらと手を振る氾麟が、
その後どうしたのか?」と疑問に思っていたのでした。
小悪魔氾麟が、楽しげに得意げにお喋りしてくれたので、オールクリアにメゲずに
もう一度書いてみました。
頭に花、見えますか? どんな花?
ああ、そんなところに妄想を無駄遣いしちゃいけない……。
メッセージ、ありがとうございました。