御題其の五十二
六太の感想
「おう、尚隆」
六太が尚隆の堂室にずかずかと入っていくと、しっと小さな叱責の声が聞こえた。六太は訝しげに首を巡らす。すると、榻の上で、陽子がそっと唇の前に指を立てている。陽子はゆっくりと下を指す。六太が視線を下ろすと、陽子の膝枕で尚隆が眠っていた。
「──なんだ、寝てるのか」
「大きな声を出さないで」
「だってさ……」
六太は口を尖らせる。尚隆を甘やかす陽子は、いつもよりも女らしくて、なんだか別のひとのようだった。そして、その膝で眠る尚隆の、あまりにも幸せそうな寝顔。──妙に面白くない気分がするのだ。
「こんな機会、滅多にないんだよ」
そんな六太に、陽子は悪戯っぽい笑みを見せた。そして、そっと尚隆の結んだ髪に手をやる。六太は陽子の手先を見て寄り目になった。
「──!」
「しーっ!」
六太は慌てて口を押さえる。無造作に括られた尚隆の髪の先は、沢山の三つ編みになっていて、それぞれに色とりどりの組紐が結ばれている。
「だってね、動けなくて暇だったし、一度やってみたかったんだ」
そう言いながら、陽子はもうひとつ三つ編みを仕上げ、班渠、と小さく使令を呼ぶ。陽子の足許から組紐を咥えた班渠が現れ、すぐに姿を消した。六太はあんぐりと口を開け、それから身体をふたつに折って笑い出す。楽しげに作業する陽子の邪魔をしないよう、声を殺しながら。
──お前、案外、気の毒な奴だったんだなぁ。
ひとしきり笑った後、六太は己の主に目を落とし、しみじみと呟いた。もちろん、胸の中で。
2006.11.30.
──なんだか、頭が壊れてまいりました。思ったように筆が進みません。
甘い尚陽を書くつもりだったのになぁ……。
もちろん(!?)「黄昏」21回は詰まっております。(威張るなよ……)
昨日、頭が壊れてて書き忘れましたが、このお話は御題其の五十「かの方の至福」の
続きでございます〜。(2006.12.01.追記)
2006.11.30. 速世未生 記
(御題其の五十二)
けろこさま
2006/12/01 00:12
こんばんは。
陽子の気持ちわかります〜。
真っ直ぐな長髪を見たら一度はしてみたい三つ編みv 可愛い尚陽話ですワv
公認にならなかったら陽子はこんな悪戯できないです。
ゆる〜〜いけど「恋する」陽子編第一弾に認定いたしましょう(笑)
この後、尚隆が目覚めるまでに三つ編みは解かれるのでしょうか? そのまま?
そのままだったら尚隆はどんな反応するのかしら〜(くすv)
未生(管理人)
2006/12/01 20:31
けろこさん、いらっしゃいませ〜。
「恋する」陽子偏第一弾認定ありがとうございます(笑)。
この後のお話も書いてみたい気がいたします。いったい、どうするつもりでしょうねぇ。
そうそう、六太はいつも陽子の味方だけど、今回はちょっと同情してますね。私も意外でした。
メッセージ、ありがとうございました。