「目次」
「玄関」
御題其の六十五
奏国親娘の密談
「──呆れたね、まったく、油断も隙もありゃしない」
「母さま、どうなさったの?
──あ
あ、兄さまのことね」
宗后妃明嬉は、茶杯を置いて、深い深い溜息をつく。隣に座っていた文公主文姫は、小首を傾げたが、すぐに得心がいったと頷いた。
「そうさ。あの子ったら、いつの間に延王と誼を持ったのやら」
「兄さまのことですもの、旅の間にちょっとね、とか言うだけよ。きっと、後で延王と酒盛りでもするのでしょうよ」
「旅の話がどうとか言っていたから、そうかもしれないね」
「後で何を話したか、探りを入れてみようかしら。それより、母さま」
文姫はにこりと悪戯っぽい笑みを見せる。
「延王は景王をお連れくださらなかったのですもの。景台輔に景王のお話をお聞きしましょうよ」
「そうだねえ」
「そうしましょうよ。だって、内乱もご自分で平定なさった武断の女王が、御自らお茶を淹れるなんて……」
「文姫と気が合いそうなお嬢さんかもしれないね」
身を乗り出し、目を煌かせてて提案する文姫に、明嬉も楽しげに同意したのだった。
2007.02.06.
長編「黄昏」第29回、巨頭会談後の奏国后妃と公主でございます。 尚隆から陽子の話を聞けなかった文姫はきっと景麒をお茶会に招待したに違いない! その前振りでございます。気が向いたらお茶会も書いてみたいと思います〜。
あはは、ご察しのとおり、「雪明」も「黄昏」も詰まっております。 さて、もう少し頑張ろうっと。
2007.02.06. 速世未生 記
(御題其の六十五)
背景画像「幻想素材館 Dream Fantasy」さま
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