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御題其の七十

悪戯後の悶着

「……一度、堂室に戻ります」
「襦裙を脱ぐ気なら、俺もついていくぞ」
 踵を返そうとした華奢な背に、延王尚隆は間髪入れずにそう宣告した。情けない顔をして振り向いた景王陽子は、深い深い溜息をつく。
「──延王、悪い冗談は止めていただきたいな」
「冗談に聞こえるか?」
 我ながら人の悪い顔をしているだろう、と思いつつ、尚隆は女らしく装った美貌の女王に問う。はたして陽子は麗しい顔を蹙め、もうひとつ大きな溜息をついた。
「あなたが言うと、冗談に聞こえない」
「俺は冗談は嫌いだ」
「──諦めろ、陽子。今日は、そのままでいた方が、身のためだぞ」
 耐え切れないらしく、静観していた六太が、吹き出しながら口を挟んだ。陽子は肩を竦め、降参、というように両手を挙げる。頭に挿された歩揺が、しゃらんと涼しげな音を立てた。
 尚隆は、にやりと笑って大きく頷く。それを着せたのは範の奴かもしれないが、脱がすのは俺の役目だぞ。そんな胸の呟きを、伴侶が察したかどうかは定かではない。ただ、六太だけが、いつまでも含み笑いを止めなかったのだった。

2007.03.19.
 甘いお話はどこ?  メロ甘いものを書こうと頑張ったのに……(泣)。見事沈没でございます〜。
 ──詰まっております。 「黄昏(含む残月)」〜「所顕」〜「花見」〜「故郷」が頭の中で全部繋がってしまい、 どこから手をつけていいか解りません!  HELP ME!  どうしたらいいと思います? (←訊くなよ……)

2007.03.19.  速世未生 記
(御題其の七十)

背景画像「幻想素材館 Dream Fantasy」さま
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