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御題其の八十六
雪の朝
猛吹雪の翌朝、外にあった細い一本道は見事に埋もれていた。伴侶は陽子に、ついてこい、と言って笑った。
ふわりふわりと雪が舞い落ちる中、陽子は伴侶の大きな背を見つめながら歩く。髪に付いては融けていた雪は、そのうち、頭に舞い降りるようになっていた。
「──綿毛みたいだ」
髪に散らされた雪を見て小さく感嘆すると、伴侶は足を止めて振り向いた。目で問う伴侶に笑みを返す。
「髪に付いた雪のこと」
ああ、と答えて伴侶は破顔する。今日は風がないな、と言って伴侶は空を見上げた。微風に舞う粉雪が、またひとひら伴侶の黒い髪に舞い降りる。ふと陽子を見た伴侶は、人の悪い顔をして口を開いた。
「お前の頭は随分めでたいことになっているな」
首を傾げて己の髪を見やる。陽子の緋色の髪にも、綿毛のような雪が付いていた。
「──確かにおめでたいかも」
紅白だなんて白を忌む常世の者には分からない冗談だね、と続けると、伴侶は大きく笑って頷いた。
2008.01.10.
今朝の最低気温、−9.9℃。日中の最高気温は−4℃だったそうです。
──真
冬モード全開。 そんなわけで、午後に出かけたときに、この冬初めて長いオーバーを着用いたしました。
微風に舞い踊る雪が綺麗で、思わず書き流した小品でございます。 いやはや、雪で尚陽を書くとは、私の頭もかなりおめでたいことになっておりますね……(汗)。
2008.01.10. 速世未生 記
(御題其の八十六)
背景画像「幻想素材館 Dream Fantasy」さま
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