「目次」 「玄関」 

御題其の九十三

(捏造過多注意!)

ある密謀

 王が斃れ、国は荒れていく。これ以上荒れることがないほどに荒んで尚も──。

 この国を、何とかしようと思う者はいないのか。祈るだけでは何も変わらない。
 王を玉座に留められなかった国。狂気に屈した王を除けなかった民。国の荒廃の責を問われるのは、王だけではない。
 深い溜息をつき、彼は蓬山を目指す人々の群れを見下ろす。目指す者の姿を探して。昇山者の中には、またもあの者の顔がなかった。

 何故、昇山しない? 何故、己が正義を天に問わない──?

 選ばれぬことが怖いか。己の罪が暴かれることを厭うか。それとも──。

 まあよい。時間はまだある。

 彼は待つことを選び、昇山者の群れから目を逸らした。

 ──そして、三十余年が過ぎ、雁国の宰輔は、生国に下ることなく天寿を全うしたのであった。

2008.08.04.
 「東の海神〜」と「漂舶」を読み直していたら、突然書きたくなってしまった小品でございます。 もしかして、天は、斡由の昇山を待っていたのかも……との妄想でございました。 捏造激しいお話でごめんなさい。

2008.08.04.  速世未生 記
(御題其の九十三)

由旬さま

2008/08/06 22:48

「ある密謀」、これまた鋭い視点ですね。う〜むと唸らされました。 斡由が昇山していたら・・・いろんな妄想が浮かびますね。

未生(管理人)

2008/08/07 05:41

 由旬さん、いらっしゃいませ〜。
 捏造激しい小品にご反応をありがとうございました。
 宰輔が王を選ばずに斃れるのはどういうときなのか、という疑問から膨らんだ妄想 でもあります。 わけありだからこそ、昇山して命あれば王にしてやろう、みたいな事情かな、 なんて思ったのでした。
 メッセージ、ありがとうございました!
背景画像「幻想素材館 Dream Fantasy」さま
「目次」 「玄関」