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御題其の百二

かの方の紅葉

「──うわぁ!」
 色鮮やかな木々を見つめ、子供のように歓声を上げる伴侶。延王尚隆は目を細めてその様を眺めた。愛しい女の素直な反応は、ささくれた心を癒す。そう、女王を宮から強引に連れ出すそのわけは、宮の主の眉間の皺を消すためだけではないのだ。
「ほら、来てよかっただろう?」
「──よくないなんて言った憶えはないよ」
 憎まれ口を叩いて唇を尖らせる女王を引き寄せて腕の中に収める。紅葉が見えない、と抗議するその朱唇を指で封じ、尚隆は低く笑った。

「美しい紅葉は、もう少し静かに愛でたいものだ」

 みるみる膨れる頬に、笑いながら口づける。そして尚隆は、紅葉よりも美しい緋色の髪にも、そっと唇をつけた。

2008.11.18.
 またもや執務中に引っ張り出されたらしい陽子主上でございます。 連れ出したかの方は、やはりとことん我儘でございますね(笑)。
 南国にて紅葉を見てまいりました。目の前に、鮮やかな色が戻り、しばし呆然……。 この秋は二度も紅葉を楽しむことができ、幸せな気持ちになりました♪  そういえば、今年は桜も二回見たなぁ〜。
 「生きるってことは、嬉しいこと半分、辛いこと半分」って、ほんとだな、と納得いたしました。

2008.11.18. 速世未生 記
(御題其の百二)
背景画像「幻想素材館 Dream Fantasy」さま
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