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御題其の百五

冬の花

 ひらひらと降りつむ雪とともに踊る緋色の髪が、淡い陽に照らされて煌いていた。雪に伸ばされる細い指。凍てつく空気を忘れさせるようにほころびる笑み。

 真白の景色の中、鮮やかに咲き誇る紅の花──。

 凍れる季節にあるはずのない花を咲かせる乙女の指に、そっと触れた。繋がれた手から伝わる温もりは、木漏れ陽のようにただただ優しい。
 驚いて見上げる瞳に、笑みを返して囁いた。
「頬が、桜色だ」
「──寒いからだよ」
 分かっている、と答えると、伴侶は唇を尖らせた。尚隆はそれに構わずに、繋いだ指に力を籠める。
「──温かい」
 小さく呟いて、伴侶は桜唇をほころばせる。そのまま、伴侶の手を引いて歩き出す。互いの温もりを、繋いだ指に感じながら。

2008.12.15.
 ここ数日、頭の中を回りに回っている「輪舞(ロンド)」という曲を、エンドレスで 聴きながら仕上げました。 私的には雪を喜ぶ陽子主上は「子犬」のイメージなのですが……かの方の目には、 どうやら乙女フィルターがかかっているようですね(苦笑)。
 体感温度―3℃の中に1時間立っていたら、私の頭も逝っちゃったとでもお思いくださいませ。 お粗末でございました。

2008.12.15. 速世未生 記
(御題其の百五)
背景画像「幻想素材館 Dream Fantasy」さま
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