御題其の百六
雪が舞う日には
大きな牡丹雪が舞っていた。思わず手を伸ばす。雪は掌で儚く融けた。小さく息をつく。陽子の手を逃れた雪は、微かな音を立て、土の上に優雅に舞い降りた。ひらりひらりと、次から次へと。
じっと足許を見つめ続ける。黒い土が白く染まっていく。ふわふわと綿のような雪が、少しずつ積もっていく。
「どうした?」
「雪を見てる」
不思議そうに訪ねる声に、顔も上げずに応えを返す。雪がそんなに面白いか、と伴侶は楽しげに笑う。いつも見ている人には分からないだろうけど、と答えると、伴侶はますます笑った。
「慶の雪はね、地面で融けるんだよ。でも、ここの雪はこんなに大きいのに、そのまま積もるんだね」
「冬だからな」
相も変わらず意地悪を言う北国の国主を軽く睨む。それでも、足許で黒い土に水玉模様を作る白い雪を見ると、笑みが込みあげる。
「このままずっと立っていたら、私の足跡がここに残るんだね」
「──雪だるまになる気か?」
伴侶は呆れて大きな溜息をつく。口ではそう言っても、きっと陽子の酔狂にこのまま付き合ってくれるのだろう。陽子はにっこり笑って頷いた。伴侶は大きな肩を竦め、もう一度深く嘆息する。白い息が、踊る雪を散らすのを見て、陽子は声を上げて笑った。
2008.12.22.
雪の少ない東の街にも大きな牡丹雪が降っておりました。
バス停でなかなか来ないバスを待っているときにも、アスファルトをどんどん白くしてゆきました。
雪が積もっていくのをゆっくり眺めたのは久しぶりでございました。
寒くて辛かったけれど、陽子主上ならばきっと楽しんでくれるだろうなぁ、と妄想したのでした。
お粗末さまでした。
2008.12.22. 速世未生 記
(御題其の百六)
けろこさま
2008/12/22 23:24
解かるな〜、陽子主上の気持ちv
あまり雪が積もらない地方に住んでいると、どんどん雪で地面が白くなっていくのを
ただ眺めているだけでも楽しいものです。
陽子さんはずっと眺めていたいだろうけど、体が冷えてきたころに
「これ以上はダメだ」とか言って延帝が有無を言わさず連れ去ってしまいそうですね、
暖か〜〜くなる所に(妖笑)
未生(管理人)
2008/12/23 07:23
けろこさん、いらっしゃいませ〜。
私も大きな牡丹雪が融けずに積もるのを見たのは久しぶりでございました。
普通、牡丹雪は暖かい日に降りますので。
10分眺めるのもかなり辛かったのですが、陽子主上ならばもっと見ていそうですね。
そして、尚隆は無言で陽子に積もる雪を払い続ける……。
想像すると笑えます! 勿論、その後も(妖笑)。
妄想を呼び覚ますメッセージをありがとうございました!