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御題其の百十五

新王のあざな

「──別に字などいらぬぞ」

 新王は一刀両断に言い捨てる。官吏たちは一様に深い溜息をついた。そして、口々に細かいことを言い立てる。御名を直接呼ぶのは恐れ多い、示しがつかない、等々。延王となった胎果の男は唇を歪めた。

「呼びにくいのならば、この名を好きなように読めばよい」

 王は「尚隆」と己の名を大きく書いてみせた。諸官は再度深く嘆息する。そして、その視線がある方向に向けられた。

「──好きに呼べってんだから、音でショウリュウとでも呼んでやればいいんじゃねえか」

 水を向けられた延麒六太は、如何にも面倒臭そうにそう言った。官吏たちは黙して視線を見交わす。それからまたも大きな溜息をつき、諦めたように頭を下げた。

 新王は、そうやって延王尚隆しょうりゅうと呼ばれるようになったのだった。

2009.05.25.
 お仕事文書ばかり作っていたら、頭が疲れてしまいました。 気分転換用に書き流した小品でございます。 そういえば尚隆ってお忍び用の字しか持ってないよな〜。 なんて思ったら、ちょっとムラムラしてしまったのでした。 お粗末でございました。

2009.05.25. 速世未生 記
(御題其の百十五)

けろこさま

2009/05/25 21:41

 ………字は、実は「三郎」だったりして(笑)

未生(管理人)

2009/05/26 05:56

 けろこさん、いらっしゃいませ〜。 なるほど、それもありましたね(笑)。
 メッセージ、ありがとうございました。
背景画像「幻想素材館 Dream Fantasy」さま
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