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御題其の百二十二

紅の光

「お招きありがとうございます」
 玄英宮の禁門前に降り立ち、景王陽子は柔らかな笑みを見せた。見慣れているはずの六太でさえ見とれてしまう、美しい笑みであった。
 鮮烈な美貌を持ちながらそれに全く無自覚な隣国の女王だが、最近は匂い立つように美しい。その理由を、六太は誰よりもよく知っている。
「よく来たな」
 国主延王よりも先に賓客を出迎えて、延麒六太は笑みを返す。翌日から麗しき伴侶と二人で旅に出る延王尚隆が、六太に表立って文句を言うことはなかった。

 己の主を無視し、六太は陽子と楽しく語らった。陽子が来ると、宮が心地よい。それは、陽子が初めて尚隆に連れられて玄英宮にやってきたときから変わらない。陽子が隣国の王でなければよいのに、とさえ思ったことがある。

「行ってきます!」

 大きく手を振り、眩しい笑顔で陽子は飛び去った。心に穴が空いたような気分になる。けれど。

 幸せそうだから、いいか。

 陽子の笑顔は陽光の恵みだ。見ているだけで温かな気持ちになる。そう思い、六太は陽子と尚隆が消えた蒼穹を眺めた。

 六太は気づいていなかった。陽子が傍にいると、尚隆の王気が和らぐのだ、ということに。主の闇を照らす紅の光を、延麒六太もまた恋うているのだった。

2009.09.14.
 長編「滄海」第1回にて、玄英宮を訪れた陽子を出迎える六太を書いてみました。
 こんなこと、誰かに指摘されても、絶対に肯定しないだろう。 そう思いつつも書かずにはいられませんでした〜。
 粗品ではございますが、Kさまに献上したいと思います。 お気に召していただけるとよいのですが。

2009.09.14. 速世未生 記
(御題其の百二十二)

Kさま

2009/09/16 22:55

 こんばんは〜。
 有難く頂戴いたしましたv
 本来きちんとごあいさつ申しあげるべきなんですが、とりあえずこちらで。
 後日きちんとお礼文をお送りいたします。

未生(管理人)

2009/09/17 06:22

 Kさま、いらっしゃいませ〜。
 いろいろおめでとうございます。 そして、押しつけ文をお受け取りくださってありがとうございました! 
 まだまだお忙しいでしょうから、お気になさらないでくださいね。
 メッセージ、ありがとうございました。
背景画像「幻想素材館 Dream Fantasy」さま
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