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御題其の百二十六
有り難くない下賜
「後宮に房室をやる。好きに使え」
「──は?」
朱衡は思わず主の顔をまじまじと見つめる。延王尚隆はにやりと笑い、続けて言った。
「極秘で使える房室がほしいと言っておったろう」
「はあ」
それが何故に後宮なのか。
問うても答えが得られぬことは分かっている。朱衡は曖昧に応えを返し、頭を下げた。主は楽しげに笑い、去っていった。
その後、朱衡は己を見る諸官の目が微妙なことに気づいた。そして、国主に美姫を妻合わせようとする輩がぱたりといなくなったことに。
謀られた。
朱衡は深い溜息をつく。そして、龍陽の寵を受ける賊臣という有り難くない風評を甘受した。苦情を申し立てても、人の悪い主が喜ぶだけだと分かりきっていた。それに、芳しくない外聞は、極秘の任務の隠れ蓑になる。
帷湍ならば、黙ってはいないだろう。
そう思い、朱衡は苦笑した。
帷湍がその流言飛語を聞いて怒りに震えたのは、実に二十年が経ってからであった。
2009.10.08.
最高気温がなんと12℃でございます。 耐え切れずにストーブを点火。そして、早速ポトフを作っております。
こんなものばかりでごめんなさい〜。 勿論「滄海」は激しく詰まっております。 どうぞ気長にお待ちくださいませ……。
2009.10.08. 速世未生 記
(御題其の百二十六)
背景画像「幻想素材館 Dream Fantasy」さま
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