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御題其の百三十
秋のある日
よく晴れた秋の日のことだった。麗しき慶主の笑顔のような陽光だ。冢宰浩瀚は窓の外を見やり、微笑を浮かべた。そんなとき。
「──困ったわね」
「どうすればいいかしら」
主の執務室に程近い回廊にて、祥瓊と鈴が憂い顔で話し合っている。浩瀚は二人にわけを問うてみた。主上が、と言って女王の友たちは口籠る。
「主上がどうかなさったのか?」
「書卓に突っ伏して動こうとなさいません」
「書簡は山積みでございます」
とりあえずお茶を淹れてお菓子を置いてまいりました、と続け、二人はまたも深い溜息をつく。浩瀚はくすりと笑い、応えを返した。
「きっと、お疲れなのだろう」
「浩瀚さまは主上に甘くていらっしゃる」
女史と女御は真顔で抗議する。そんなつもりはないのだが、と浩瀚は軽く笑った。そして、まだまだ物言いたげな二人に告げる。
「それでは、後ほど私が参ろう」
ちょうど、お届けものをしようと思っていたところだったから、と続けると、女王の友たちは安堵の貌を見せた。
「浩瀚さまは主上のご気分を引き立てるのがお上手でらっしゃるから」
「どうぞよろしくお願いいたします」
そう言って、女史と女御は深々と頭を下げる。浩瀚は笑みを湛えて頷いた。
2009.11.27.
某所さまに献上いたしました小品の連鎖妄想でございます。 うう、こんなものを書き流してごめんなさい〜。 はい、「滄海」第10回に詰まっての更新でございます。 お粗末でございました。
2009.11.27. 速世未生 記
(御題其の百三十)
背景画像「幻想素材館 Dream Fantasy」さま
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