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御題其の百三十五

謹賀新年

 尤もらしい理由をつけて隣国の女王を呼びつけた、と聞かされて、六太は深々と溜息をついた。当の本人はというと、悪びれもせず、上機嫌で頷いている。
「きっと雪が見られるぞ、と言ったら、快く承知してくれたぞ」
「──あのな」
 六太はげんなりと肩を落とした。確かに陽子は雪を気に入っているが、そんなに巧くいくはずがない、と首を振る。が、尚隆は人の悪い顔をして六太を見下ろした。
「正月早々陽子に会えて、お前も嬉しいだろう?」
「そういう問題かよ」
 相変わらず気儘な主をつくづく眺め、六太は大きく嘆息したのだった。

 麗しき隣国の女王は、きっちりと約束の刻限に現れた。折しも降り始めた風花が優雅に舞い、ふわりと賓客の髪に落ちる。鮮やかな緋色の髪を飾る、白い雪花。六太は思わず感嘆の溜息をついた。
「正月らしいめでたさだな」
 尚隆が笑い含みに告げると、陽子はにっこりと笑みをほころばす。六太もつられて頬を緩めた。寒さを吹き飛ばす明るい笑い声が三人を包みこんだ。

 胎果にしか分からない紅白のめでたさに、出迎えた数多の官吏たちは首を傾げて見守るのみだった。

2010.01.08.
 松の内に出したかった小品でございます。 なんだか、まだまだ正月気分が抜けていない管理人をお許しくださいませ〜。 今年もどうぞよろしくお願い申し上げます!

2010.01.08. 速世未生 記
(御題其の百三十五)

ひめさま

2010/01/09 00:58

 こんばんは。
 尚隆と六太のやり取りにも胎果3人が作り出す情景にも明るさがあって ほっとするものを感じます。
 ワタクシメとしましては珍しく気持ちが下り坂なこの頃ですので、 本当にうれしいお話でした。(*^_^*)

未生(管理人)

2010/01/09 06:38

 ひめさん、いらっしゃいませ〜。
 他愛もないお話でひめさんを慰められて光栄でございます。 ご感想に私も元気をいただきましたよ〜。
 メッセージ、ありがとうございました!
背景画像「幻想素材館 Dream Fantasy」さま
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