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御題其の百三十七
物想い
咲き初めし紅の花。十六のまま、散ることも実を生すこともない、美しい花。
十七の姿を見たかった。十八も十九も知りたかった。同じ時を歩み、共に老いていきたかった。
「──どうかした?」
輝かしい翠の宝玉を覗きこんだまま黙していると、伴侶が小首を傾げて問うてきた。己の感傷が可笑しくて、尚隆は自嘲する。
何も言わずに抱きしめた。目を見張った伴侶は、それでも小さな手を優しく尚隆の背に回した。
2010.01.21.
最近ワードを開けるのは年賀状とお仕事ばかりでございました。 なかなか調子が戻りません。 というわけで、リハビリ小品をお届けいたしました。 なんとか「滄海」に頭を戻したいです。気長にお待ちくださいませ。
2010.01.21. 速世未生 記
(御題其の百三十七)
背景画像「幻想素材館 Dream Fantasy」さま
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