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御題其の百三十八
落日の始まり
目の前には、どこまでも果てしなく続く途があり、振り返れば、今まで無我夢中で歩んできた途がある。
はた、と気づく。己はこの途に囚われているのだ、と。
馴染みの官吏が少しずつ欠けていく。官職を辞して野に下る彼らを見送る度に、虚しさが胸を覆っていく。それは、いつも己に寄り添う半身たる麒麟を見ても癒されない想いであった。
慈愛に満ちた目で見つめる麒麟。半身は、王であるこの身を支えてくれる。己が善き王でいる間は。そう思うと、自嘲の笑みが漏れた。
目の前の途を見据える。この途を歩む限り、己は王の栄華を興ずることができる。だが、この途は、なんと果てしないのだろう。見つめていると、目眩がする。思わず目を閉じた。そし
て──。
それが、その王朝の落日の始まりであった。
2010.02.19.
昨日の午後、涙目でお仕事を片付けました。 硬い文書を読み上げながら一文ずつ付け合わる、という作業を延々と続けました。 昔は毎日こんな仕事をしていたんだよな〜。 今は、書かれている文言が頭に染み渡るまで物凄く時間がかかります(溜息)。けれど。
硬い文書は硬い妄想を生み出しました。 雁の始まりを描いた「東の海神〜」を地味に読み返しているせいかもしれませんけど。
2010.02.19. 速世未生 記
(御題其の百三十八)
背景画像「幻想素材館 Dream Fantasy」さま
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