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御題其の百四十二
乞巧奠小噺
年に一度の七夕の日。この日、短冊を笹に飾ると、認められた願いが叶うという。胎果の女王が齎した星のお祭である。
七夕が間近に迫ったある日、女史と女御は準備に大わらわであった。
「今年はどんなお願いをしようかしら」
「そうねぇ」
色とりどりの料紙を短冊にすべく切り分けながら、女史と女御は語り合う。毎年、五色の短冊に書かれる様々な願い。真剣なものもあれば、他愛のないものもある。その中で、女王はいつも己のことよりも国と民のことを思っているのだ。
「──陽子はきっと、人のことばかり願うのでしょうね」
「皆の願いが叶いますように、と必ず書くものね……」
祥瓊の言葉に鈴は頷いた。二人で顔を見合わせて深い溜息をつく。やがて祥瓊は顔をほころばせ、戯れ言を言ってのけた。
「いっそのこと、女王が襦裙を着てくれますように、とでも書こうかしら」
「それは傑作だわ」
襦裙を持って男装の女王を追いかけまわした日々が蘇る。ひとしきり笑いあって、女王の側近たちはまたも深い溜息をつく。
「でもねぇ……きっと逆鱗に触れるわよね」
「そうよね……」
しばし肩を落とした二人だが、気を取り直して作業を続けた。そして、美しい短冊を仕上げたのであった。
そんな軽口が大変な騒動を引き起こすとは、この時の二人が知るべくもなかった。
2010.07.07.
今朝、猛然と書いていた七夕のお話でございます。 出かける前に仕上げられず、帰ってきたら燃え尽きてしまいました。 ああ、瞬発力がなくなっております……。
とりあえず御題に上げておきます〜。お楽しみいただけると嬉しいです。
2010.07.07. 速世未生 記
(御題其の百四十二)
背景画像「幻想素材館 Dream Fantasy」さま
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