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御題其の百四十七

かの方の告白

 小春日和の午後、ふらりと訪れた賓客は庭院での茶を所望した。麗しき宮の主が仕事を終えるまで、女史と女御が北の大国の王をもてなす。いつもながら寛いだ笑みを浮かべる主の伴侶に、祥瓊は日頃から気になっていることを訊いてみた。

「延王は陽子のどこがお好きなのですか?」
「勁く気高く美しいところ、かな」

 打てば響くような応えを聞いて、祥瓊と鈴はうんうんと頷く。我が国の女王でもある友を的確に表現した言葉だったからだ。が、それから、と延王尚隆は続けた。

「──儚いところ、だな」

「ええ!?」
 思わず立ち上がって叫び声を上げ、祥瓊は己の口を両手で覆う。見ると鈴も同じような反応を示していた。延王は面白そうに二人を見つめている。そんなとき、話題の主が回廊から大きく手を振って庭院に駆け降りてきた。その眩しい笑顔、そして溌剌とした所作。
「は、儚い……?」
 呆然と呟くと、延王は呵々大笑した。そうして散々笑った後。言っておくが、と人の悪い貌を見せる。

「そう簡単にお目にかかれるものではないぞ」

 祥瓊は鈴と顔を見合わせた。そこへ到着した宮の主が首を傾げる。
「何の話?」
「儚げな太陽の話だ」
 暖かな初冬の太陽を指差しつつ延王は軽く答える。それは簡単に見られなさそうだね、と笑う陽子に、祥瓊は無言で茶を淹れたのだった。

2010.10.29.
 鋭意祭跡地整備中でございます。 Rさま作「秋月夜」の淡く笑む儚げな陽子主上、こんな姿は尚隆しか知らないよな…… と思ったら我慢できませんでした(笑)。
 実はちょっと腹立たしいことが続き、頭に血が上っておりました。 毒吐く前に頭を冷やさなければ、と書き流しました。 うん、効果あり、でございます。もう少し頭が冷えたら日記浮上いたします〜。

2010.10.29. 速世未生 記
(御題其の百四十七)
背景画像「幻想素材館 Dream Fantasy」さま
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