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御題其の百五十一

聖なる夜に

 郊祀が終わり、緊張が一気に緩んだ。新年の祭礼がまだ残っているが、それまでは少し気を抜いたままでいよう。陽子はそう思い、自室でゆっくり寛いでいた。

 淹れ立ての茶の馥郁とした香りが立ち上る。そう言えば、今日はクリスマス・イブだ。そんなことを思い出すなんて、よっぽど疲れているらしい。陽子は独り苦笑する。それでも、茶杯に茶を注ぎながら、ぼんやりと蓬莱のクリスマスを思い浮かべた。
 華やかに飾られたクリスマス・ツリー。美味しそうなケーキ。街に響く楽しげなクリスマス・ソング。幸せそうに肩を寄せ合う恋人たち。

 あのひとは何をしているだろう。こんな忙しい時期に会うことなどできない。分かっているけれど。分かっているから、敢えて思い出さないようにしていたのに。
「──莫迦だな」
 自分で淋しくなるようなことをして。陽子は自嘲する。そんなとき。
 かたりと小さな音がして、大きな窓がそっと開く。息を呑んで見守ると、朗らかな笑顔が現れた。信じられない。陽子は半信半疑で訊ねた。

「──どうして?」
「暇ができたからな」

 伴侶は簡潔な応えとともに陽子を抱きしめる。何も言えずに身を委ねた。なんて素敵なプレゼント。メリー・クリスマス、と小さく呟くと、伴侶は怪訝な貌をする。陽子は答えの代わりに笑みを見せ、愛しい伴侶の首に腕を絡めた。

2010.12.24.
 さすがクリスマス・イブ。素敵なクリスマス・ソングが沢山かかります。 なんだか気分も浮きたちますね。
 思ったより早く年賀状が仕上がりましたので、解放感に浸ってしまいました。 浮かれて書き流した小品をどうぞ。 恥ずかしくなるくらいベタですが、お許しくださいね〜。

2010.12.24. 速世未生 記
(御題其の百五十一)
背景画像「幻想素材館 Dream Fantasy」さま
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