御題其の百六十八
五十歩百歩
「──藁を切って両長になったんだよね?」
女王が難しい顔をして隣に座す延王を見上げた。延王は大真面目に頷く。
「それがどうした?」
「あのね、浮民が冬器の剣を持ってること自体おかしいと見咎められなかったの?」
女王の疑問に延王は呵々大笑し、女王の愛剣を指差す。
「お前がそれを問うのか?」
「私のことなんか関係ないだろう?」
「内乱に介入したのは同じではないか?」
「だーかーらー!」
班渠は隠形したまま女王とその伴侶の中身のない舌戦を聞く。五十歩百歩の言い合いに口を挟むのは野暮だ。長い年月を女王の護衛として過ごしてきた班渠は、それを熟知している。笑いを堪えつつ気配を殺す班渠の苦労を知る者は少ない。が──。
「班渠、我慢せずともよいぞ」
不意に向けられた言葉に、班渠は忍び笑いを返して女王の不興を買ったのだった。
2011.10.25.
つい書き流しました。中身がなくてごめんなさい〜。
2011.10.25. 速世未生 記
(御題其の百六十八)