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御題其の百九十一

(末声注意!)

呼び得ない名

 笑いさざめく声がする。賑やかな、華やかな娘たちの明るい声が。爽やかな初夏の風が運ぶその楽にも似た音は、彼に遥か昔の懐かしい日々を思い起こさせた。

 頭を寄せ合い、楽しげに笑う美しい娘たち。その中でもひときわ鮮やかな緋色の髪を翻して振り返るそのひとは、眩しい笑みを彼に向けるのだ。

「浩瀚!」

 今では呼ばれることも稀となった彼の名を、かのひとは軽やかに呼ぶ。笑みを返し、彼は国主景王に拱手した。陽子、と遠くで声がする。主は彼に手を振り、己の名を呼ぶ仲間の許へと帰っていった。
 蓬莱育ちの主は、称号よりも名前で呼ばれることを好んだ。無論、彼がその輝かしい御名を唇に乗せたことはない。国主を名で呼ぶなど不遜過ぎる。彼は主の臣である己の立場を弁えていた。だからこそ。
 呼び得ないその名を、彼は胸で噛みしめる。

 陽子。ようこ。

 それだけで、夏の陽射しのように鮮烈な笑みが甦る。今も昔も変わりなく――。

「如何なさいましたか、老師」
「――爽やかな初夏だな」
「そうですね」
 陽射しに煌めく窓の外の濃き緑を眺めつつ、彼は答えた。彼の名を呼ばぬ徒弟は、豊かに葉を茂らせる木々を見上げて首肯する。吹きこむ風は、今なお初夏のさざめきを運び続けていた。

2013.06.23.
 絶賛ログ作成中でございます。 ほんとうに6月中に作り終えることができるのかと戦いておりますが、 地味に進めております。

 ごめんなさい、ちょっと吐き出しを。少し下げますね。



 審査待ちだった案件、更に違う書類が必要だと連絡がまいりました。 担当者が恐縮してかなり低姿勢でございました。 もう一月近くかかっておりますしね〜。 私は怒っているわけではなかったのですが、 電話で話している内に先方がどんどん萎縮して 私の知りたいことを教えてくれませんでした。
 間違うのは仕方ないのです。あまり出ない案件でしょうから。 ただ、しっかりとフォローしてもらいたいだけ。 いつまでに書類を出せばいつ業務完遂するのか。 決算期に入金が月を跨ぐと大変なことになるって 金融業に携わっていれば解るでしょー!  声を荒げないように気をつけましたが、先方半泣きのようでございました(苦笑)。
 その後遣り取りを重ね、なんとか業務完遂日の確約を取り付けました。 さて、あともう少し。最後に私が手続きを間違えないように気をつけねば。

 こういう時に私が頼るのは冢宰閣下でございます。 といっても、この浩瀚は既に野に下り、 義塾にて後進を育てていたりするのですが(苦笑)。
 久々の更新が末声で失礼いたしました〜。

2013.06.23. 速世未生 記
(御題其の百九十一)
背景画像「幻想素材館 Dream Fantasy」さま
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