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御題其の二百二十二

王の休日

「――休日はどう過ごされているのですか?」

 景王陽子の問いに、延王尚隆は僅かに眼を瞠る。その隙に、延麒六太がにやりと笑って応えを返した。

「こいつは毎日が休日だぜ、訊くだけ無駄だ」

 我が半身ながら失礼なことを言う。まあ、いつものことと言われれば、その通りなのだが。尚隆は六太の言を無視して陽子を見やった。
「まあ、あまり区別はしていない、というのが実情だな。仕事が溜まれば昼も夜もないし」
「出奔して戻れば監視が付いて逃げられないだけだろ」
 六太が半畳を入れる。尚隆は顔を蹙めた。それは強ち間違いではないが、六太にも当てはまることだろう。気儘に宮を抜け出すのは六太も同じだ。

「というわけで、こいつは参考にならないよ。陽子はどうしてるんだ?」
「そうですね、まだこちらのことがあまりよく分かっていないので、字の練習をしたり、書物を読んだりしてますね」
 尚隆をすっぱりと切り捨てて問うた六太に、生真面目な景王は予想通りの答えを返す。訊いて六太は大仰に肩を竦めた。
「相変わらずだな! もう少し遊んでもいいんじゃねえか?」
「――陽子、六太の言うことをあまり真面目に受け取るなよ。悪影響でしかない」
 尚隆は片眉を上げて口を挟む。六太は放っておくとほんとうに陽子を連れて遊びに行きかねない。すると、六太と陽子が同時に尚隆に顔を向けた。

「説得力がまるでない」
「まったくです」

 尚隆は苦笑を禁じ得なかった。日頃の行いのせいだ、と側近の声がしたような気がする。それもそうかもしれないが、遊びも寄り道も、時には役に立つものだ。尚隆はそのまま立ち上がる。
「では、身を以て教えてやろう」
 尚隆は小首を傾げる陽子に人の悪い笑みを送る。
「雁国流休日の過ごし方、だ」
「そうこなくっちゃ!」
 六太はすぐさま反応し、戸惑う陽子の手を引いてすたすたと歩き出す。慶国女王の足許からは深い溜息が聞こえた。女王の護衛とお目付け役を兼ねる使令だ。尚隆は破顔した。
「班渠、休日の過ごし方を伝授するだけだ。心配するな」
 姿を見せぬ使令はもうひとつ深い溜息をつくのみだった。

2016.04.30.
 祭中閑古鳥の鳴く本宅及びブログにも拍手をありがとうございます。励みになります〜。

 ツイッター上で開催されている「#十二国記絵描き文字書き60分一本勝負」 第14回「休日の過ごし方」というお題で書いてみました。 久々のリアル参加でございます。

 今回は執筆40分くらいでしょうか。あせあせと推敲してアップしております。 ちょい遅刻くらいかしら?

 只今絶賛桜祭開催中、北の国の桜も開花してしまい、つまりは頭が末声モード……。 沈んだ気持ちを引き上げるためと、先日書いた尚隆視点の小品が存外に楽しく書けたのとで、 今回軽く書き流してみました。お楽しみいただけると嬉しく思います〜。

 後程祭の方のレスに向かいますね〜。

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2016.04.30.  速世未生 記
(御題其の二百二十二)
背景画像「幻想素材館 Dream Fantasy」さま
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