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常世語のお題(尚陽編)

うつ伏せに倒れた妖魔

 うつ伏せに倒れた数多の妖魔を見下ろし、延王尚隆は眉根を寄せた。雁の街中にこれほど妖魔が現れるなど、異常な状態だ。尚隆はこの事態の原因となった娘に目をやった。
 質素な袍子に身を包む、緋色の髪の娘。襲いくる妖魔に怯むことなく立ち向かったこの娘こそ、隣国に遣わされた新たな王。党の報せを受けてやってきた延王尚隆は薄い笑みを浮かべた。
「良い腕をしている」
 血糊を払って剣を収めながら、肩で息をする娘に声をかけた。娘は黙して尚隆を見上げる。これほど真っ直ぐに見つめ返されたのは久しぶりだ。臆することのない翠玉の瞳に、延王尚隆は魅せられたのだった。
 
2007.06.11.
 長編「月影」で書かなかった二人の出会いの場面でございます。 あれ、でも「昏闇」で書いたような気もする……。 と、とにかく、大好きな場面のひとつでございます。

2007.06.23.  速世未生 記
(常世語のお題(尚陽編)「う」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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