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常世語のお題(尚陽編)

大声で叫ぶ荒民なんみん

「──また女王なんだって」
「おいおい、慶に帰って大丈夫なのか」
「でも、延王が助力したっていうじゃないか」
「それに、雁のあちこちから慶へ送ってくれる旅団が出てるそうだぞ」
「それなら──苦労せずに帰れるかも」
「でもなぁ……」

 街角で頭を寄せ合い。話し合う慶の荒民たち。ひとしきり討論していた荒民たちは、頷き合って歩み始める。最後まで迷っていた者も、大声を上げて後を追った。
「待ってくれ、俺も行くよ!」

 そう、景王陽子は延王尚隆を動かした女王だぞ。波乱に満ちていた慶の夜明けを、国に戻って見るがよい。

 じっと聞き耳を立てていた尚隆は、胸で呟き、薄く笑んだ。

2007.06.22.
 長編「月影」後あたり、でしょうか。ふらりとどこかの街に降りた尚隆でございます。 「風の万里〜」で楽俊が祥瓊に「慶へ向かう旅団が雁のあちこちから出ている」と 教えていました。そんな様子を妄想してみました。

2007.06.23.  速世未生 記
(常世語のお題(尚陽編)「お」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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