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常世語のお題(尚陽編)

枯れた玉泉ぎょくせん

「作物も育たない北国で、玉泉までも枯れるなんて……」
 それでも他国に助力してはいけないというのか。清廉な女王は潤んだ瞳で延王尚隆を見上げた。
「それをなんとかするのが、王の才覚なのだ」
「けれど、その王が、行方知れずじゃないか!」
「では、お前が戴の王になるか? 慶すらその手に持て余しているお前が」
 女王の頬がさっと紅潮し、翠玉の瞳が燃え上がった。
「──何かできることがあるはずだ、と言ってるんだ」
「陽子……。そんなに簡単な問題ではない」
 それでも、お前はやると言うのだろう。お前ならば、己の最善を尽くして前に進もうとするのだろう。五百年の統治を誇る延王に臆せず言い返すお前だから。そんなお前こそが、延王尚隆の望む、ただひとりの女、なのだ。
 
2007.06.28.
 長編「黄昏」第4回〜第7回くらいの、尚陽対決な問答でございます。 ほんと、お題で隙間を埋めてどうすんだ、と思いつつ、手を止められずにおります……。 連鎖妄想ばかりでごめんなさい〜(って、あちこちに書いているような……)。

2007.06.28.  速世未生 記
(常世語のお題(尚陽編)「か」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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