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常世語のお題(尚陽編)

化粧の濃い花娘ゆうじょ

 風漢はいつもの如く、花娘を十人ばかり侍らせて楽しんでいた。その花娘の中に、目を引く娘がいた。
 陶器のように白い肌、濡れたように光る黒髪。伏し目がちのその娘は、如何にも新入りらしかった。物慣れないその様が却って興をそそる。
「──こちらへ」
 傍へ呼ぶと、その娘は怖じけたように拱手する。風漢は娘を引き寄せて、頤を掬い上げた。

 その、輝かしい翠の瞳──。

 化粧の濃い娘を見つめ、風漢は低く笑う。

「──陽子、そんな恰好で何をしておるのだ?」
「──あなたを迎えに来ただけのはずだったのですが」

 小麦色の肌を化粧で隠し、鬘で髪を黒く見せても、隠しようもない煌く翠の宝玉。その瞳を瞬かせ、隣国の女王は苦笑したのだった。 

2008.01.17.
 久々の「常世語のお題(尚陽編)」でございます。 なんだかまた続きを書きたくなるような内容になってしまいました。 期待しないでお待ちくださいませ。
 (「続き、楽しみです。気長〜〜にいつまでも待ちます」 とのご感想をいただきました。ありがとうございました! 2008.01.23.追記)

(続き、書きました。 ご興味おありの方は「夜話」連作「戯事」をご覧くださいませ〜。2011.11.11.追記)

2008.01.17.  速世未生 記
(常世語のお題(尚陽編)「け」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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