「目次」
「玄関」
常世語のお題(尚陽編)
小粋な
簪釵
(
かんざし
)
「──殺風景な頭だな。せめてこれくらいつけていけ」
呆れた声を上げた伴侶がぽいと投げて寄越したのは、小粋な簪釵だった。あまりにも無造作に投げられたそれを慌てて受けとめ、陽子は溜息をつく。素直に受け取るつもりなどなかったというのに。
「──落としたら壊れちゃうじゃないか」
「落とさなかったろう?」
悪びれない応えに、陽子は脱力する。それから、全くもう、と呟きながらも簪釵を髪に挿した。
「──綺麗だな」
「簪釵が、でしょ」
顔を蹙めて答えると、伴侶は遠慮なく大笑いした。それから、やっぱりお前は面白い女だな、と陽子に口づける。全くもう、と言いながらも、陽子は頬を朱に染めた。
2007.06.12.
たまにはこんな小品をどうぞ! 褒められても素直に取れない陽子主上は私の「萌え」ツボでございます。
2007.06.23. 速世未生 記
(常世語のお題(尚陽編)「こ」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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