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常世語のお題(尚陽編)

騒がしい飯堂しょくどう

「楽俊」
 騒がしい飯堂に入って辺りを見回すと、すぐに声をかけられた。声の主は緋色の髪をひとつに結び、簡素な長袍を纏った麗人。久しぶりに見るその鮮やかな笑みを、楽俊は複雑な思いで見つめ返す。
「陽子、また抜け出してきたのか?」
「人聞きが悪いな。もっと喜んでくれるといいのに」
 隣国の女王となった親友は柳眉を顰めて悪態をつく。楽俊は深い溜息をついた。
「あの方が忙しいから、おいらのところに来たんだろ?」
「なんで分かるの?」
 目を丸くする親友に答えず、楽俊はもうひとつ溜息をついた。だって夕べ、国主延王がやって来て。そう言ったのだ。似た者同士の二人だな、と楽俊は苦笑した。

2007.06.12.
 なんだか、祭ノリに近いかもしれません。 楽俊はいつもこんな役で可哀想かも……。

2007.06.23.  速世未生 記
(常世語のお題(尚陽編)「さ」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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