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常世語のお題(尚陽編)
年老いた
門衛
(
もんばん
)
久方ぶりに訪った固継。門衛は、少し目を見張り、驚いたように陽子を見つめた。そして、そんなはずはない、とひとりごち、小さく首を振ったのだった。
年老いた己と、変わらぬ姿の陽子を見比べ、同一人物のわけがない、と思ったのだろう。それでも。
「──憶えていてくれたんだ、と思ったら嬉しかった」
固継には、ひと月しかいなかったのだから。そして、短い間に色々なことがあった。陽子は膝に頬杖をつき、遠くを見つめた。隣に坐るひとが低く笑う。
「お前を忘れる者は、少ないと思うぞ」
「どうして?」
「とにかく目立つからな」
そう返し、伴侶は楽しげに笑う。そして、目を見開く陽子を優しく抱き寄せた。
2009.07.31.
お久しぶりな「常世語のお題(尚陽編)」でございます。 けれど、あんまり甘くないですね〜。
時の流れを止めた者と、時の流れをその身に刻む者。 どちらも切ないですが、その切ない気持をかの方が断ち切ってくださいました(苦笑)。 いいんだか悪いんだか……。
お粗末でございました。
2009.07.31. 速世未生 記
(常世語のお題(尚陽編)「と」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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